2003 第76回東京大学五月祭
医学部医学科4年生企画
第76回東京大学五月祭は,2003年5月31日(土)・6月1日(日)に東京大学・本郷キャンパスで開催されました。医学部医学科4年生の企画にも多数お越しいただき,誠にありがとうございました。
■ 『朝日新聞』2003年5月30日付夕刊(東京本社版),「東大医学生,自ら学ぶ医療過誤」という見出しで,第3部「医療過誤」が取り上げられました。
五月祭冊子『科学的思考ノススメ』
私たちの予想をはるかに上回るご来場をいただき,会場でお配りしていた冊子『科学的思考ノススメ』はなくなってしまいました。わざわざお越しいただきながら手にできなかった皆さまには,ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ありません。
ここに,同内容のものをインターネット版として公開いたします。ご覧になっていただければ幸いです。
インターネット・エクスプローラをお使いの場合,右クリックから「対象をファイルに保存」を選んでダウンロードしてください(サイズが大きいのでご注意ください)。PDFファイルが開けないときは,Adobe Reader(旧Acrobat Reader)を入手してください。
またご参考までに『科学的思考ノススメ』の原稿 [TeXソース他,LHA 3.2MB] もおいておきます。こちらは自己責任でお願いします。
内容紹介
- 第1章 こころのやまい
- 第2章 患者と医者,これからの関係 ◇
- 第3章 アトムが夢みる未来医療 ◇
- 第4章 一般市民による科学的思考 ◇
- 第5章 患者様へサービスします
- 第6章 これでいいのか医薬分業
- 第7章 2004年卒後臨床研修必修化
- 第8章 これからの医療施設
- 第9章 医療過誤――冷静と情熱のあいだ ◇
◇印のものについては,五月祭において発表も行いました。
正誤表
ご迷惑をおかけしています。以下のように訂正させていただきます。
- 48ページ21行目:「知る権利や」「自己決定権」など → 「知る権利」や「自己決定権」など
- 53ページ5行目:「24962億円」は「2兆4962億円」と記すべきでした。
- 60ページ下から2行目〜61ページ2行目:現在喘息の患者さんは呼吸器内科で,アトピー性皮膚炎の患者さんは皮膚科で診察しています。そこで,アレルギー・リウマチ内科ではリウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんを診察しています。
→ アレルギー・リウマチ内科では主にリウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)や喘息の患者さんを診察しています。
- 151ページ17〜18行目:本書では第2章「インフォームドコンセント」 → 本書では第2章「患者と医者,これからの関係」
- 185ページ21行目:ほんの1 2割程度 → ほんの1〜2割程度
- 186ページ12行目:2 3割 → 2〜3割(2カ所)
- 193ページ18行目:8.3 加藤進昌 東大病院精神医学科 → 8.3 加藤進昌 東大病院精神神経科
- 202ページ最終行:報道・批判される社会的・道義的責任も発生する → 報道・批判されるといった社会的・道義的責任も発生する。
- 206ページ7行目:Communication → コミュニケーション
- 207ページ下から4行目:「⇒」の前で改行
- 209ページ25行目(《問題点》のところ):2. 誤与薬 → 2. 誤薬
- 213ページ10行目:【判旨】有罪被告人Wだけではなく → 有罪 [改行] 被告人Wだけではなく
- 216ページ最終行:「改竄」にルビ「かいざん」を付ける
- 217ページ10行目:「⇒」の前で改行
- 217ページ12行目:「⇒」の前で改行
- 220ページ4行目:別稿 → 第2章「患者と医者,これからの関係」
- 225ページ20行目:MARU2 → ○2(丸囲み数字の2のこと)
- 236ページ以降の「医療費」で,データの出典が載っていないものは,
- 日本医師会2015年医療のグランドデザイン―OECD HEALTH DATA1999―
- 厚生労働省調べ
- WHO World Health Report 2000
をもとにしています。(第9章は出典があいまいなものが多くてすみません)
- 258ページの表9.12は右端が切れています。表9.5〜9.13は,27ページの図2.1と同じ資料に基づいていますので,そちらを参照してください。
- 268ページ下から13行目:また,救急医を志しない理由は → また,救急医を志さない理由は
- 274ページ2行目:以下のような判決が下るようです。 → 以下のような責任があると考えるのが妥当なようです。
- 274ページの表:停職2カ月(?) → 県立病院の行政処分として停職1〜2カ月,場合によれば看護業務停止が出される可能性もある
- 277ページからの堀康司弁護士のインタビューは,別冊に再掲載しているのが正しいものです。
- 289ページ12行目:ながら」,お菓子 → ながら,お菓子
- 「索引」は残念ながら不完全です。とくに第8〜9章は未収録。同じ章であっても,(原稿を出した時期によって)収録の密度がかなり異なっています。ご了承ください。
『科学的思考ノススメ』に関してご質問などございましたら,以下のアドレスまでメールでお願いします。東京大学医学部への直接のお問い合わせはご遠慮ください。
2003年度医学部医学科4年生企画の紹介
第1部 一般市民による科学的思考 2003年5月31日(土) 11:00〜17:00
世の中にはさまざまな情報が飛び交い,行動の選択肢は数多あります。そして我々日本人は行動を決定する際に何を根拠にしているのでしょうか? 多くの場合は何となく,みんながいいと言っているからという迎合的な部分がのが多いのではないでしょうか? しかしそれは楽ではあるが大変危険な意思決定の仕方です。我々は次の身近な3つのものを取り上げ,我々自身が科学的に判断することの必要性,また,情報を提供する側のあり方などについて再び考えてみたいと思います。各々のテーマ概略は以下の通りです。
- ワクチンの接種,一般には感染を防ぐための手段として広く受け入れられており,積極的に接種すればよいというのが共通の認識かもしれません。しかしその一方で副反応など悪い面もあります。ワクチン接種の是非,功罪について討論形式で発表し,聴衆の方々にもワクチン接種に対しての深い考察をする機会としていただければ,と思います。
- 「牛肉を食べても本当に安全なのか?」。これはBSEパニックにおける国民の最大の関心事でした。消費者は,失態続きの行政,煽動的な情報を流すメディアを責めるだけでなく,リスクバランスを失った自身にも騒動の原因があることを忘れてはなりません。牛肉を食べる事とタバコを吸う事ではどちらのリスクが高いのか。安全性とは何かということを念頭におき,自己責任でリスク判断をすることが消費者に求められています。BSE問題で浮き彫りになったリスクコミュニケーションの問題を考察します。
- 身近な健康グッズや食品は本当に「健康」に良いのでしょうか? 例としてマイナスイオンやサプリメントを取り上げ,世の中に流布している情報と実際に科学的に解明されている事実との乖離(かいり)に注目します。また,その乖離を埋める手段として消費者の取るべき態度や判断基準とともに,政府主体の健康問題に関する新しい発信形態 — Entertainment Education — についてアメリカの例をとって提案します。
第2部 アトムが夢みる未来医療 2003年6月1日(日) 10:00〜12:00
今年2003年は「鉄腕アトム」誕生の年です。それが,私たちの企画の出発点でした。「鉄腕アトム」の中で21世紀は,車が空を飛び,ロボットが身の回りの世話をしてくれる,高度な世界として描かれています。その世界が実現するのはまだ先になりそうですが,50年前にかかれた「鉄腕アトム」は,21世紀に実際に今いきている私たちが読んでも「当時は未来をこのように予測していたのか」と興味深く感じられます。そこで私たちも手塚氏のように未来,それも未来の「医療」を予想してみよう,と考えました。まだ専門的な知識もあまりない私たちですが,将来の医療を担う者として,自分が将来どのような医療制度のもとで,どのような技術を用いているのか,あるいはどのような研究をしたいか,どのような医師になりたいのか,理想論もまじえながら予想してみたいと思ったのです。
その材料としてまず過去の医療を調べ,過去から現在への流れをおうことにしました。具体的には30年という時間を設定しました。30年前といえば,現在第一線で活躍されている先生方がちょうど医学部をご卒業なさった頃です。文献だけではわからない,実際の30年前の医療の世界の様子をしるため,先生方にお話を伺いにいきました。
まだまだ準備段階であり,調べてみて初めて医療という分野のあまりの広さに驚いている状態ですがこれから私たちなりの30年後の未来像をつくれれば,と思っています。
第3部 医療過誤〜冷静と情熱のあいだ〜 2003年6月1日(日) 13:00〜17:00
我々の企画では,医療過誤の問題について扱っていこうと考えています。近年マスコミにおいて医療事故の報道がなされることは決して珍しいことではなくなってきています。しかし,そうした報道から知られる医療の実態というものは,現実の一側面にしか過ぎません。また,そうしたマスコミにおいて,事故再発防止の試みに触れられることはあまりありません。その一方で,尽きることのない患者側の医療への不信や不満というものもあります。このように,医療過誤といっても範囲は非常に広く,難しい問題がたくさんあります。そこで,まず実際にどのような事件,訴訟が起こっているのかそしてどのような判決がなされているのかという裁判における現状を概説し,その中で判決の基準がどのようなものになっているのかを考えます。その上で,そうした問題の背景となるような,研修医の労働条件の問題から始まり医者と患者の関係,医者側の医療過誤への意識の問題,患者側の意識の問題,法曹側の意識の問題,第三者機関の必要性,現在の保険制度の問題,医療問題の現代の報道のされ方など様々な問題について実際の現場の声を多く取り入れつつ出来る限り紹介していきます。そして,そうした現実に問題となっている点を提示するに留まらず,実際に今どのようなことが医者側,患者側に求められているのかを考えた上で,取りうる対策について考えていきたいと思います。我々はこの発表を過渡期にある医学生として,医療従事者・非医療従事者双方に偏らないような客観的なものにしたいと考えております。
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