問題1. 5年前ループス腎炎で発症したSLE患者で、高用量のステロイド薬の治療を受け、徐々に減量し、プレドニン10mgにて経過観察をしていた。1週間前軽い感冒様症状の後、39℃に及ぶ高熱、頭痛、吐き気に続いてけいれん発作を起こし緊急入院した。考え得る病態を鑑別し、必要な検査、治療法について述べよ。
全身性エリテマトーデス(SLE)はほとんどの患者で再燃と寛解をくりかえす。この患者の場合も、SLEの再燃は考慮しなければならない。ループス腎炎の場合、とくに血清補体価と抗DNA抗体を測定することによって腎炎の増悪を早期発見でき、ステロイドを増量することができる。
この患者の場合、頭痛や痙攣を認めることから、CNSループス(SLEにおける中枢神経症状)の病態になっているとも考えられる。髄液穿刺(通常の検査に加えて、IgG indexやIL-6なども測定)、脳波、頭部CT・MRI・PET/SPECTなどが必要な検査となる。また、CNSループスの鑑別としては、薬剤性の精神・神経症状や中枢神経系感染症、脳血管障害などが挙げられる。感染症については髄液検査が、脳血管障害については頭部CTやMRIが有用である。
また、患者はステロイド投与量を漸減してきたわけではあるが、ステロイドの中止や減量のさいに見られる症状を起こしているとも考えられる。すなわち、ステロイド多量投与により副腎皮質からのホルモン分泌が低下していたところにステロイドが減量されたため、体内の副腎皮質ホルモンを枯渇し、吐き気や頭痛などの症状を認めた(ステロイド離脱症候群)。
ほかにもSLEとは独立の病態として、発熱や痙攣がみられるので、感染、新生物、膠原病、薬物、脳腫瘍、代謝性なども考えられる。
(参考文献:「内科系統講義」テキスト。SLEの臨床症状や検査所見・治療などについて詳細にまとめられています)
■試験情報 山本教授に直接うかがった話によれば、「アレルギー・リウマチ内科の立場からは、ステロイド減量による症状を鑑別にあげてほしかった」。ただし、通常の発熱や痙攣などの鑑別を考えることも「臨床医として当然」なので、それができていれば合格点である。なお、苦し紛れにSLEの診断基準などを書いたときは、「書かないよりはまし」「もう1問の出来とのかねあい」であるとのこと。
問題2. 生体と真菌アスペルギルスとの関係を考察し、その取りうる肺病変の種類と診断、治療法について述べよ。
真菌アスペルギルスは、通常の空気中に1 m3あたり数個浮遊していて我々は常時本菌に曝露されているが、感染することはめったにない。肺結核後遺症として肺内に空洞を持っており、そこに本菌が住みつき発症する「肺アスペルギローマ(定着型)」、免疫能が低下していて日和見感染として発症する「侵襲性アスペルギルス肺炎(組織侵入型)」、アスペルギルスが抗原となりI型、III型アレルギーにより発症する「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(アレルギー型)」などのように、生体に特殊な原因があるときに真菌アスペルギルス症は発症する。
※解答用紙は、1問あたりB5判程度のスペースだったそうです。