外科学シケプリ - 2003 M2のぺーじ

腫瘍、外科免疫

2003年5月27日2限
名川弘一 血管外科・大腸肛門外科教授

最初の10分くらいはずっと共用試験の話をしていた。うちらの下の学年からは共用試験に合格しないとM3に上がれなくするという話。

1. 腫瘍の定義

「生体構成組織の自律性を持った過剰の増殖」

腫瘍というものは、良性だろうと悪性だろうと中枢や周囲のレギュレーションを受けずに『自立性』を持って増えるものだと強調していた。

2. 分類

悪性腫瘍の定義は、病理学的に見てパターン認識されるもので、言葉で言うのは難しい。あと、転移するものは悪性。形態の区別は下の表のようになるが、細かい言葉を覚える必要はなく、イメージをとらえろとのこと。

良性腫瘍悪性腫瘍
形態円形・楕円形不整形
発育速度遅い速い
発育形式膨張性浸潤性
境界明瞭不明瞭
表面平滑・整粗・不整
癒着少ない多い
転移ない多い
再発少ない多い
全身影響小さい大きい

悪性腫瘍のうち、
上皮由来のものを癌腫といい、
上皮組織以外の由来のものを肉腫という。

ただし、広義の(ひらがなの)「がん」は悪性腫瘍と同義とされるそうだ。

(重要) 3. 早期癌と進行癌

「早期癌」とは、
胃や大腸では、原発巣の深達度が粘膜下層までのもので、リンパ節転移は問わない。
食道では、原発巣の深達度が粘膜下層までのもので、リンパ節転移が無いものに限る。

早期癌は消化管の上皮にしかありえず、膵臓、肝臓、乳腺などの実質臓器には早期癌の概念は無い。例えば乳腺では、乳管上皮に癌ができるとすぐに奥に浸潤するため、消化管で言うと固有筋層を破っているのと同じ、つまり進行癌と同じである。

4. 癌の進展形式

この4つを覚えておけばよい。

接種性転移(接触性転移)という、上唇から下唇へ接触転移する形式もあるが、重要でない。

5. 癌の診断法

病歴聴取、理学的検査、血液生化学検査、各種画像検査などいろいろあるが、一番覚えておかにゃならんのは、細胞診と組織診の違い。細胞診はclassで分類され、組織診はgroupで分類されるので混同しないように。細胞診は数十程度の無構造の細胞集団を病理診断するのに対し、組織診ではある構造を保っている組織の像を見て診断する。

細胞診のクラス分類
class I異型細胞がない
class II異型細胞は存在するが、悪性ではない
class III悪性細胞が疑わしいが、断定できない
class IV悪性細胞の可能性が強い
class V悪性細胞である
生検組織診断基準
Group I正常組織および異型を示さない良性病変
Group II異型を示すが良性と判定される病変
Group III良性と悪性の境界病変
Group IV癌が強く疑われる
Group V

6. 癌の治療

手術の分類(根治的手術・姑息的手術)

手術意味
絶対的治癒切除絶対治ってる
相対的治癒切除多分治ってる
相対的非治癒切除多分治ってない
絶対的非治癒切除絶対治ってない

化学療法

下の2種類あるのだけは覚えろ。薬剤の名前までいちいち覚えなくてよい。

抗癌剤性質機序
濃度依存型薬剤 時間とは関係なく、濃度高ければ高いほどよく効く 細胞膜を直接攻撃するなど
時間依存型薬剤 長い時間かけて投与した方が効く 細胞周期をストップさせるなど

免疫療法

BRM: biological response modifier 「宿主の腫瘍に対する生物学的反応を修飾して抗腫瘍効果を期待するもの」

臨床に出てから名前をよく効くので、略号だけは覚えとくように。

7. 腫瘍マーカー

下の表の腫瘍マーカーはよく出てくるので、覚えること。

食道癌SCC
胃癌CEA, CA19-9, AFP
大腸癌CEA, CA19-9
乳癌CEA, CA15-3

スライド

食道造影:つるんとした良性腫瘍のイメージを覚えておくように。デコボコした悪性腫瘍は浸潤してるのでそれだけは取り出せない。

早期胃癌の内視鏡切除:特記無し

CT分厚い食道:気管に直接浸潤している癌の進展形式が説明された。

リンパ節:胃から大腸までの周囲の200個以上のリンパ節にはすべて番号がついている。リンパ行性転移が多いので。

血行性転移:肝臓、肺、骨への転移が多い。

腹膜播種:特記無し


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