M2のぺーじ

予防・健康管理学の考え方と実際

公衆衛生学 第2回「予防・健康管理学の考え方と実際」(2003年12月4日2限)のシケプリをお届けします。担当はかんりにん@M2のぺーじです。

過去問によれば,授業第2回のポイントはずばり 一次・二次・三次予防 の意味,そして 罹患率・有病率 の意味と計算問題です。今年も出題される可能性がきわめて高いでしょう。逆に他の内容は全くといっていいほどいらないので,ここでは思いきって割愛し,コンパクトにまとめてみました。不安なら授業のレジュメか昨年のシケプリを一読してください。

一次・二次・三次予防

2002年度本試では,一次・二次・三次予防についてそれぞれ1行の解答欄で「簡潔に説明せよ(箇条書きでもよい)」という問題が出ました。

公衆衛生の領域では「予防」を3段階に分けて扱います。

一次予防とは,一言でいうなら病気にならないようにすることです。ジョギングや体重管理は,いくつかの病気を同時に予防します。インフルエンザや麻疹の予防接種は特定の病気だけを予防するものです(特殊予防)。また上下水道の整備やゴミ収集事業などの社会的取り組みも一次予防の例です。

二次予防は病気の早期発見・早期治療のことです。一次予防との違いは,自覚症状はないもののすでに病気になりつつある点です。二次予防の代表例としては健康診断やがん検診が挙げられます。

三次予防は,患者本人も病気を自覚しすでに治療も始まっている段階で,その病気の合併症なり後遺症なりを予防すること,あるいは合併症・後遺症による被害を最小限に食い止めることです。たとえばリハビリテーションがこれに当たります。

このうち一次予防については,疾病のリスクファクターとの関連が重要になります。喫煙と肺がんの関係や喫煙と虚血性心疾患の関係など,さまざまな疫学研究が行われてきました。

感染症は,単一のリスクファクターから生じると考えられます。対して,生活習慣病(成人病)は複数のリスクファクターが絡みあって生じます。

2002年は「成人病・生活習慣病の代表的リスクファクターを6つ挙げよ」と問われました。レジュメ的には,タバコ▽食事・栄養▽肥満▽飲酒▽性行動▽運動・身体活動――が解答例。

また2001年は,穴埋め問題として「歴史的に人類の食事は,糖分,(  )分,塩分の多い食事に移行してきた」(こたえ:脂肪)。

罹患率と有病率

疫学の範囲では計算問題が出題されています。第2回では用語が紹介されただけですが,ここでは他の授業の範囲(第4,5,10回など)も一部含めて扱います。

有病率(prevalance)とは,ある一時点における当該疾患患者の単位人口に対する割合のことです。100人のクラスである日7人風邪を引いていたら,その時点の有病率は7%で,これはごく当たり前の概念ですね。

一方,罹患率(incidence)とは,ある一定期間に発生する当該疾患患者の単位人口に対する割合です。この定義で良いわけですが,第4回でより正確に扱われました。それについては 文末 に計算例を示しておきます。

試験で最重要なのは,罹患率と有病率とを結ぶ次の関係式です。

有病率=罹患率×有病期間……♪

例として罹患率が20人/10万人・年であるような病気を考えます。この病気の平均有病期間が3カ月(1/4年)だとすると,ある時点での(平均的な)有病率は,20人/10万人・年×1/4年=5人/10万人と推定されます。これは直観にもかなっています。

最後に2002年本試です。いずれも♪を使えばOKです。

「糖尿病の年間罹患率が1%で罹病期間が5年間であるとき,予想される(点)有病率はいくらか」(こたえ:5%)。

「両者の罹患率が同等であるとすると,膵臓癌,脳腫瘍のいずれが有病率が高いと考えられるか。ただし,膵臓癌の罹病期間は3カ月,脳腫瘍のそれは1.5年とする」(こたえ:脳腫瘍)

なお第4,5,10回などでは,罹患率は罹患密度(incidence density)とも呼ばれています。

●罹患率の考えかた

罹患率の考えかた

図の線分が観察期間。B,Dは転入などで途中から加わった。●印が罹患を意味し,その後は観察対象から除外する。

結果的にA〜Eはそれぞれ2.5,3,3,2.5,4年観察され,合計の観察期間は15年である。このことをperson-years(観察人年)という概念を用いて「15人・年」ということがある(第4回参照)。

15人・年の間に3人罹患したのだから,罹患率は3人/15人・年=0.2/年と求められる。


2003 M2のぺーじ
2004-01-13 公開