2003 M2のぺーじ

鼓室形成術の歴史と21世紀

授業内容はずばり「耳鼻科の歴史」でした。

授業では、とくにどの内容に重点が置かれるといったことはなく、ひととおり最後まで説明が進められました。

時代 人物 ことがら
エジプト(前16世紀) パピルスに「耳」の記述
ギリシャ(前5世紀) ヒポクラテス 視診,鼓膜を聴覚器官とみなす,耳性頭蓋内合併症
ギリシャ(前4世紀) アリストテレス 耳と脳は神経で続いていない
ローマ(2世紀) ガレヌス 5つの脳神経,耳と脳は聴覚神経で結ばれる,内耳を labyrinth と呼ぶ
ルネサンス(15〜16世紀) ヴェサリウス Vesalius 『人体の組織』,ツチ骨・キヌタ骨
ルネサンス(15〜16世紀) ユスタキオ Eustachio 『聴器の書』,耳管(ユースタキ管)
ルネサンス(15〜16世紀) ファロピオ Fallopio cochlea,labyrinth,tympanum,脳神経,聴覚神経
ルネサンス(15〜16世紀) パレ Paré 外科の元祖,先天性外耳道閉鎖の手術,「私が処置し神が癒し給うた」
17〜18世紀 ウィリス Willis 『脳の解剖』
17〜18世紀 ドゥヴェルニ Duverney パリ大学,耳管は鼓室の空気を換気する,耳漏は脳から溢れ出るものではない
17〜18世紀 ヴァルサルバ Valsalva 『人の聴覚器』,「ユースタキ管」の命名者,Valsalva法
17〜18世紀 モルガーニ Morgani ドーバ大学,耳の解剖と病理を結びつける
17〜18世紀 コツグノ Cotuguno 迷路は液体で満たされる
17〜18世紀 スカルパ Scarpa 膜迷路の発見,正円窓は第2の鼓膜として働く,Scarpa's ganglion
19世紀 コルチ Corti コルチ器の構造
19世紀 ヘルムホルツ Helmholtz 『音の感覚』,ピアノ理論,物理学と医学を融合させた「天才」
19世紀 ヤースリー Yearsley 「耳疾患は喉・鼻・耳粘膜の病的形態に起因」,人工鼓膜
19世紀 ワイルド Wilde 急性乳突起炎の治療(Wilde's incision),小説家オスカー・ワイルドの父親
19世紀 トインビー Toynbee 耳硬化症,耳鳴の治療にクロロホルムと青酸吸入(みずから死亡)
19世紀 シュワルツ Schwartze 乳様突起単純削開術
19世紀 ポリツェル Polizer 美しいカラーアトラス(版画による)
20世紀前半 中耳根治術から保存的中耳根治術へ,抗生物質の開発,鼓室形成術,顕微鏡下手術
20世紀後半 ウルスタイン Wullstein 鼓室形成術(1953年),ことしは鼓室形成術50周年!(だから、この講義をやっているそうな)
20世紀後半 ベケシー Bekesy 内耳伝音系統,place theory,ノーベル賞
20世紀後半 キリカエ Kirikae 中耳伝音機構,てこ比,面積比,東大耳鼻科3代前の教授
20世紀後半 人工内耳
21世紀 耳科手術は滅びるだろう(悲観論) vs. 予想もしない発展があるものさ(楽観論)

勉強のあいまに,ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』(artchive.com)。「ルネサンス医学はこんな息吹につつまれていたのですよ。東大文学部の研究所がフィレンツェにあるので,そこにただで泊めてもらって,みなさんもフィレンツェ美術館に行ってください」(加我教授談)

この項目の担当は かんりにん@M2のぺーじ でした。おまけ(何の役にも立ちません)。


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