- 講義日:2003年10月29日第1限
- 教官:加我君孝教授(耳鼻咽喉科学)
- 配布プリント:A3 版片面 2 枚綴り(図なし)……持っていれば授業の記念になるでしょう。^^
- この講義内容は昨年まではなく、したがって過去問もありません。今年度は出題される模様です。
授業内容はずばり「耳鼻科の歴史」でした。
授業では、とくにどの内容に重点が置かれるといったことはなく、ひととおり最後まで説明が進められました。
時代 | 人物 | ことがら |
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エジプト(前16世紀) | パピルスに「耳」の記述 | |
ギリシャ(前5世紀) | ヒポクラテス | 視診,鼓膜を聴覚器官とみなす,耳性頭蓋内合併症 |
ギリシャ(前4世紀) | アリストテレス | 耳と脳は神経で続いていない |
ローマ(2世紀) | ガレヌス | 5つの脳神経,耳と脳は聴覚神経で結ばれる,内耳を labyrinth と呼ぶ |
ルネサンス(15〜16世紀) | ヴェサリウス Vesalius | 『人体の組織』,ツチ骨・キヌタ骨 |
ルネサンス(15〜16世紀) | ユスタキオ Eustachio | 『聴器の書』,耳管(ユースタキ管) |
ルネサンス(15〜16世紀) | ファロピオ Fallopio | cochlea,labyrinth,tympanum,脳神経,聴覚神経 |
ルネサンス(15〜16世紀) | パレ Paré | 外科の元祖,先天性外耳道閉鎖の手術,「私が処置し神が癒し給うた」 |
17〜18世紀 | ウィリス Willis | 『脳の解剖』 |
17〜18世紀 | ドゥヴェルニ Duverney | パリ大学,耳管は鼓室の空気を換気する,耳漏は脳から溢れ出るものではない |
17〜18世紀 | ヴァルサルバ Valsalva | 『人の聴覚器』,「ユースタキ管」の命名者,Valsalva法 |
17〜18世紀 | モルガーニ Morgani | ドーバ大学,耳の解剖と病理を結びつける |
17〜18世紀 | コツグノ Cotuguno | 迷路は液体で満たされる |
17〜18世紀 | スカルパ Scarpa | 膜迷路の発見,正円窓は第2の鼓膜として働く,Scarpa's ganglion |
19世紀 | コルチ Corti | コルチ器の構造 |
19世紀 | ヘルムホルツ Helmholtz | 『音の感覚』,ピアノ理論,物理学と医学を融合させた「天才」 |
19世紀 | ヤースリー Yearsley | 「耳疾患は喉・鼻・耳粘膜の病的形態に起因」,人工鼓膜 |
19世紀 | ワイルド Wilde | 急性乳突起炎の治療(Wilde's incision),小説家オスカー・ワイルドの父親 |
19世紀 | トインビー Toynbee | 耳硬化症,耳鳴の治療にクロロホルムと青酸吸入(みずから死亡) |
19世紀 | シュワルツ Schwartze | 乳様突起単純削開術 |
19世紀 | ポリツェル Polizer | 美しいカラーアトラス(版画による) |
20世紀前半 | 中耳根治術から保存的中耳根治術へ,抗生物質の開発,鼓室形成術,顕微鏡下手術 | |
20世紀後半 | ウルスタイン Wullstein | 鼓室形成術(1953年),ことしは鼓室形成術50周年!(だから、この講義をやっているそうな) |
20世紀後半 | ベケシー Bekesy | 内耳伝音系統,place theory,ノーベル賞 |
20世紀後半 | キリカエ Kirikae | 中耳伝音機構,てこ比,面積比,東大耳鼻科3代前の教授 |
20世紀後半 | 人工内耳 | |
21世紀 | 耳科手術は滅びるだろう(悲観論) vs. 予想もしない発展があるものさ(楽観論) |
勉強のあいまに,ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』(artchive.com)。「ルネサンス医学はこんな息吹につつまれていたのですよ。東大文学部の研究所がフィレンツェにあるので,そこにただで泊めてもらって,みなさんもフィレンツェ美術館に行ってください」(加我教授談)
この項目の担当は かんりにん@M2のぺーじ でした。おまけ(何の役にも立ちません)。