問1 以下の項目について述べよ。
1)環境因子と発癌
2)癌の組織型
3)動脈硬化の成り立ち
1) 発癌に関与する因子として遺伝的因子と環境因子があり、両因子の発癌への寄与の割合は様々であるが、多くの癌について環境因子が大きくその発癌に寄与すると考えられている。環境因子は化学的因子、物理学的因子、生物学的因子に大別される。化学的因子として最も大きな問題になっているのが喫煙で、肺癌、肝臓癌、食道癌、喉頭癌などのリスクが著しく上昇する。コゲに含まれるヘテロサイクリックアミン、野菜に含まれるN-ニトロソウレアなどの発癌性物質やアルコールの過剰摂取も癌を誘発する。逆に発癌を抑制するものとしては、β-カロチンやポリフェノールがある。物理的因子としては、放射線や紫外線が代表的である。原爆被曝者の疫学的研究でも、被曝者において発癌危険性の上昇が確認されている。生物学的因子では、腫瘍ウイルスの感染が主である。重要なウイルスとしてEBV、HPV、HBV、HCV、HTLV-1があげられる。
※環境因子のトピックはいろいろ出てきたと思いますが、だいたいまとめて見ました。山極(やまぎわ)先生によるウサギの耳の化学発癌とか、ほかにもいろいろありましたね。疾患一般ではなく、癌と特定されている点に注意しましょう。
2) 平成14年 問1の1を参照してください。
3) 年度不明本試 問2の2を参照してください。
問2 病気の分類方法について述べよ。
疾患の病理学的分類方法の1つとして、病因や病態生理などの違いによる分類がなされる。具体的には、奇形、循環障害、炎症・感染、変性、腫瘍などに分類される。心臓を例に挙げると、奇形は心室中隔欠損症等の心奇形、循環障害は狭心症や心筋梗塞、炎症・感染は心筋炎、変性は心筋症、と大まかに分類できる。肺の場合は、循環障害として肺水腫や肺梗塞、炎症・感染疾患は肺炎や肺線維症など、変性は肺気腫、腫瘍は肺癌といった具合である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は呼吸器の機能に着目した分類であり、上記の分類方法には当てはまらない。血管系の疾患についてもほぼ同様に、奇形、炎症、代謝障害、循環障害、腫瘍などに分類されるが、実際は循環障害による疾患は考えにくい。頻度の高い血管病変である動脈硬化症は代謝障害として分類される。
※第1回の授業に最初から出席していた人(そんな人は追試対象者の中にいない?)は、僕が黒板に肺癌とか書いたのを覚えていると思います。教科書にもあまり書いてないし何を聞きたいのかよくわからない設問ですが、授業で触れたのは上記のことくらいだと思います。深山先生出題なので、オリジナルの解答も歓迎されると思いますが・・・
問3
(1) 急性炎症(acute inflammation)について血管や血流の変化、白血球の反応を中心に簡単に述べよ。
(2) アポトーシスの異常が関係している疾患を2つあげ、そのうちの1つについて説明せよ。
(1) 年度不明本試 問4の4を参照してください。
※炎症の中でも急性と特定されていますが、特徴として好中球が主体となることくらいを付記しておけば、あとは4徴候の説明くらいでいいと思われます。生化でおなじみの3ステップモデルとかは皆さんご存知だと思いますので、そのへんも適当にまとめて書いておくとよいでしょう。
(2) 疾患:Li-Fraumeni症候群、濾胞性B細胞リンパ腫
アポトーシス調節機構の1つに、BAXやBIDなどのアポトーシス促進因子とBCL-2、BCL-Xなどのアポトーシス抑制因子によるものがある。BAXはミトコンドリアの膜の透過性を亢進させ、チトクロムCの細胞質への放出を促す。チトクロムCはAPAF-1と共にカスパーゼ系のカスケードを誘導し、アポトーシスを起こすと考えられている。逆に、BCL-2などはチトクロムCの放出を抑制するので、アポトーシスを止める方向にはたらくことになる。濾胞性B細胞リンパ腫では、染色体転座によりIg重鎖とBCL-2の遺伝子が結合しており、Ig重鎖の強力なエンハンサーによってBCL-2が過剰生産されてしまう。したがって、重度の損傷を受けたアポトーシスを起こすべき細胞にもアポトーシスが誘導されず、増殖し続けて癌化が促進されることになる。
※Li-Fraumeni症候群の方はp53関連ですので、次の問4の(2)を見てください。ここでは重複を避けるため濾胞性B細胞リンパ腫について説明しました。2つあげろということですが、癌と白血病など、重複している解答があり困ったと宮園教授が言っていました。ここであげた2つのように、癌の中の疾患を2つあげるのはよい、というか模範的と言っておりました。
問4
(1)以下の癌と関係の深い用語(癌遺伝子、癌抑制遺伝子、ウイルス、腫瘍マーカーなど)を下のア〜コから選べ。
1.甲状腺髄様がん ( ) 2.家族性大腸腺腫症(FAP) ( ) 3.遺伝性非ポリポーシス性大腸癌(HNPCC) ( ) 4.慢性骨髄性白血病(CML) ( ) 5.成人T細胞性白血病 ( ) 6.前立腺がん ( ) 7.神経芽細胞腫 ( ) 8.網膜芽細胞腫 ( ) 9.家族性乳癌 ( ) 10.バーキットリンパ腫 ( ) ア abl、 イ EBウイウス、 ウ BRCA1、 エ RB、 オ PSA、 カ HTLV-1、 キ Ret、 ク ミスマッチ修復遺伝子、 ケ APC、 コ N-myc
(2)p53について ○1 その機能、○2 がんとの関わりを述べよ(図示してもよい)。
(1) 1-キ、2-ケ、3-ク、4-ア、5-カ、6-オ、7-コ、8-エ、9-ウ、10-イ
(2) 宮園先生が大学院生に出した問題2を参照してください。
※○2 は、p53が代表的な癌抑制遺伝子であること、p53の変異によって適切な細胞周期停止の阻害、損傷DNA修復不全、アポトーシス誘導障害が起こり、これらが癌化につながることなどを書けばよいでしょう。