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解剖学 中田先生のプール問題 解答例

2002-09-21

制作者からのメッセージ――

こんな分量なので誤字脱字があると思いますが、そこはご容赦ください。解答によっては多く書きすぎているものもあると思いますが、各自適宜けずってください。


I. 頭頚部について

  1. 脳神経 I,II,VIII の走行・分枝・支配について述べよ。
  2. 脳神経 III,IV,VI の走行・分枝・支配について述べよ。
  3. 脳神経 V の走行・分枝・支配について述べよ。
  4. 脳神経 VII の走行・分枝・支配について述べよ。
  5. 脳神経 X の走行・分枝・支配について述べよ。
  6. 脳神経 IX,XI,XII の走行・分枝・支配について述べよ。
    (上記 1〜6 については頭蓋からの開口および支配される筋などの名称を含む。)
  7. 頭頚部の自律神経(神経節もふくむ)とその支配についてのべよ。
  8. 副鼻腔の広がりと開口についてのべよ。
  9. 中耳・耳管の構造について述べよ。
  10. 眼窩の壁を構成する骨と眼窩内を通る血管についてのべよ。
  11. 外頚動脈の走行と枝の分布についてのべよ。
  12. 喉頭の構造と声門の開閉について述べよ。
  13. 甲状腺とそのまわりの構造について述べよ。
  14. 頚神経叢の枝とその分布・支配について述べよ。

II. 上肢・背について

  1. 椎骨を連結する靭帯や関節について述べよ。
  2. 正中神経の支配とその麻痺について述べよ。
  3. 尺骨神経の支配とその麻痺について述べよ。
  4. 橈骨神経の支配とその麻痺について述べよ。
  5. 脊椎と脊髄・脊髄根の位置関係について述べよ。また脊髄根がでる部分の構造についてものべよ。
  6. 鎖骨下動脈の枝とその分布についてのべよ。
  7. 腋窩動脈の枝とその分布についてのべよ。
  8. 肘関節の構造について述べよ。
  9. 肩関節の構造とこれをささえる筋についてのべよ。
  10. 腕神経叢についてのべよ。

I. 頭頚部について

1. 脳神経 I,II,VIII の走行・分枝・支配について述べよ。

脳神経I(嗅神経olfactory nerve)は感覚性線維より成る。鼻腔天井部を被う嗅粘膜の上皮内に存在する嗅覚受容神経細胞からの軸索突起が小束をなしながら篩骨の篩板cribriform plateの多数の小孔を貫くが、このような小束の集合体を嗅神経と称する。嗅神経は前頭蓋窩に存在する嗅球olfactory bulbに終わる。嗅球の後方端より出る白色の帯状構造体が嗅索olfactory tractであり、これは後方に伸びて前有孔質付近の大脳表面部位で内側嗅条と外側嗅条とに2分して終わる。嗅神経は嗅覚を伝えるものである。

脳神経II(視神経optic nerve)は感覚性線維より成る。視神経は視覚を伝えるものであり、網膜retina内で神経節細胞層をなす神経細胞体から出る神経線維で構成されている。視神経は眼球の後面を離れてから、視神経管を経て(眼動脈と伴行する)頭蓋内に達する。眼窩内においても、この神経は硬膜、クモ膜、軟膜からなる被膜を有し、したがってクモ膜下腔が視神経内で頭蓋よりも外に伸び出している。頭蓋内で左右の視神経がたがいに合して視神経交叉をなすが、そのとき網膜の内半部由来の神経線維が反対側の視索optic tractに入る。しかし、網膜の外半部由来の神経線維は同側の視索に入る。視神経交叉部上面は脳の終板に接し、視神経交叉部下面は鞍隔膜を介して脳下垂体に近接する。視神経交叉の後外側部から始まる左右の視索はそれぞれの体側で後方に向かい、中脳の側面をめぐるようにして外側膝状体に達する。ただし、瞳孔反射やその他の眼球反射に関与する神経線維群は外側膝状体を経由せずに、視蓋前核pretectal nucleusあるいは上丘に直接進入する。外側膝状体から発する神経線維は視放線optic radiationを形成しながら後方に走行し、大脳半球後頭葉の視覚領に達する。

2種類の感覚性神経根、すなわち前庭根(上根)と蝸牛根(下根)が脳神経VIII(内耳神経vestibulocochlear nerve)を構成する。前庭根(前庭神経ともよばれる)は内耳の前庭および三半規管からの平衡覚刺激を伝える。また、蝸牛根(蝸牛神経ともよばれる)は内耳の蝸牛からの聴覚刺激を伝える。これら2神経は橋と延髄の境をなす脳幹前面から起こり、後頭蓋窩を横切り、顔面神経の下面に沿いながら内耳道に入る。内耳道底に前庭神経節を有する前庭神経は上部と下部からなる。上部は卵形嚢膨大部神経であり、内耳道底の上前庭野を通り、さらに上篩斑を経て前庭に入り、卵形嚢神経(卵形嚢斑の感覚上皮にいく)、前膨大部神経(前膨大部稜の感覚上皮にいく)、外側膨大部神経(外側膨大部稜の感覚上皮にいく)、球形嚢への枝に分かれる。下部には球形嚢神経と後膨大部神経とがあり、前者は球形嚢斑の感覚上皮に分布し、後者は内耳道において最も早く神経幹から分かれて、内耳道底の単孔を通りさらに下篩斑を経て後膨大部稜の感覚上皮に終わる。蝸牛神経は内耳道でラセン孔列を通り、蝸牛軸縦管に入り、次第に蝸牛軸ラセン管に入り、そのなかにラセン神経節を経てラセン器の感覚上皮に至る。

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2. 脳神経 III,IV,VI の走行・分枝・支配について述べよ。

脳神経III(動眼神経oculomotor nerve)は大脳脚の内側方における中脳前面より起こり、クモ膜下腔における動眼神経は、後大脳動脈と上小脳動脈のあいだを、両動脈に密着し走行する。やがて動眼神経はクモ膜および脳硬膜内葉を貫いて海綿静脈洞の外壁内を前方に走りながら上枝と下枝に分かれるが、いずれの枝も上眼窩裂を通り、同時に総腱輪の内部を走行して、眼窩内に進入する。動眼神経をなす神経線維はほとんど運動性線維であるが、その一部は副交感系節前線維であり、2種類の内眼筋(瞳孔括約筋と毛様体筋)の支配に関与する。動眼神経上枝は上直筋superior rectus muscleを貫通してこの筋に枝を与えたのち、上眼瞼挙筋levator palpebrae superioris muscle内に進入して終末する。下枝は、下直筋inferior rectus muscle、内側直筋medial rectus muscle、下斜筋inferior oblique muscleの神経支配にあずかる。なお、下枝からの枝のうち下斜筋に向かうものからは、副交感系の節前線維が作る細枝が出て毛様体神経節ciliary ganglionに接続する。この神経節から発する節後繊維は短毛様体神経を経由し眼球の後面に進入する(瞳孔括約筋と毛様体筋に分布)。以上より、動眼神経の活動が上眼瞼をあげさせ、眼球前面を上方・下方・内側方へと動かし、瞳孔を縮小させ、眼に近い物体に視線の焦点を合わせる。

脳神経IV(滑車神経trochlear nerve)は最も細い脳神経であり、運動性線維より成る。中脳後面における下丘下端の高さの部位より起こり、大脳脚の側面に沿うように弧を描きながら前方に回り、次にクモ膜と脳硬膜内葉を貫いて海綿静脈洞の外壁内を前方に進むが、そのとき動眼神経のやや下方に位置を占める。そののち、滑車神経は上眼窩裂内の上方部分を通り、眼窩に入って、上眼瞼挙筋起始部を横切りながら前内側方に走行し、上斜筋superior oblique muscleに進入する。したがって、滑車神経の活動は眼球の下外側方への回転を助ける。

脳神経VI(外転神経abducent nerve)は運動性線維より成る。橋と延髄の境界部にあたる脳幹前面より起こり、はじめは後頭蓋窩に位置するが、のちに前方への進路をとり、鞍背外側部の脳硬膜内葉を貫き、海綿静脈洞を内頚動脈の下外側に位置を保ちながら貫通する。そののち、上眼窩裂内の下方部分を通り、総腱輪内部をも通過して、眼窩に進入する。その後この神経は前方に走り、外側直筋lateral rectus muscle内に終末する。したがって外転神経の活動により眼球の外側方への回転を来す。

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3. 脳神経 V の走行・分枝・支配について述べよ。

脳神経V(三叉神経trigeminal nerve)は非常に太い混合性脳神経である。三叉神経は橋前面より太い1本の感覚根と細い1本の運動根(感覚根の内側面に付着)で起こり、上錐体静脈洞よりやや下方の高さを前方に向かいながら後頭蓋窩を出て中頭蓋窩における側頭骨の錐体尖(岩様部の一部をなす)の前面にまで達するが、そのとき脳硬膜内葉に強く付着するためこれの一部が嚢状に伸びながら三叉神経根に伴行する形となる。錐体尖の前面で三叉神経感覚根は拡張し三叉神経節をなす。この神経節は半月形であり、前述の脳硬膜内葉の嚢に包まれる。運動根はこの神経節の下面に接するが神経節内とはつながらない。三叉神経節の前縁より眼神経ophthalmic nerve(V1)、上顎神経maxillary nerve(V2)、下顎神経mandibular nerve(V3)の3枝が出る。

眼神経は純感覚性であり、脳硬膜内葉を貫き海綿静脈洞の外壁内を、動眼および滑車神経より下方に位置しながら前方に進む。眼神経は涙腺神経lacrimal nerve、前頭神経frontal nerve、鼻毛様体神経nasociliary nerveの3枝に分かれるが、これらはいずれも上眼窩裂を通り眼窩内に進入する。涙腺神経は上眼窩裂内の上方部分を通り、眼窩に進入したのちに外側直筋上縁に沿いながら前方に進むが、途中で頬骨側頭神経からの枝(涙腺に向かう副交感系節後繊維からなる)と合流する。涙腺神経の本幹は上眼瞼外側部の皮膚に分布する枝となり終末する。前頭神経は上眼窩裂内の上方部分を通り、眼窩に進入してから上眼瞼挙筋の上面と眼窩上壁とのあいだを前方に進むが、眼球後面のやや手前の部位で滑車上神経と眼窩上神経に分岐する。より細い滑車上神経は、上斜筋滑車の上方を通りながら眼窩上縁を経て額の皮膚に終末する。より太い眼窩上神経は眼窩上切痕(あるいは眼窩上孔)を通り、額の皮膚のうちの滑車上神経分布領域よりも外側の部分に終末する。眼窩上神経からは、前頭洞の粘膜に分布する枝も出る。鼻毛様体神経は上眼窩裂の下方部を通り、同時に総腱輪内をも通行しながら眼窩に入る。そののちこの神経は視神経および眼動脈の上方を横切り、眼窩内側壁に達してからさらに内側直筋上縁に沿って前方に走行し、終枝をなす前篩骨神経と滑車下神経とに分かれる。鼻毛様体神経からの枝は毛様体神経節への交通枝、長毛様体神経、後篩骨神経、滑車下神経、前篩骨神経である。毛様体神経節への交通枝に含まれる神経線維は感覚性のもののみである。すなわち、眼球の一般感覚を伝える線維が短毛様体神経の中を通りいったん毛様体神経節に入るが、毛様体神経節内を素通りしてこの交通枝内を通り、鼻毛様体神経内に進む。長毛様体神経は瞳孔散大筋に向かう交感系節後線維を含む2〜3本の細い神経(鼻毛様体神経が視神経と交叉する付近で鼻毛様体神経より枝分かれする)の総称名である。これらの細い神経は、短毛様体神経とともに前方に走り、視神経の眼球付着部のそばで眼球強膜を貫く。そののち長毛様体神経は眼球内で強膜と脈絡膜のあいだを走行して、虹彩に至る。後篩骨神経は後篩骨孔を通り、篩骨洞および蝶形骨洞の粘膜に向かう。滑車下神経は上斜筋滑車の下方を通りながら前方に走行し、上眼瞼内側部および鼻根部の皮膚に終末する。前篩骨神経は前篩骨孔を通り、前頭蓋窩における篩板の上面に達する。そののちこの神経は鶏冠基部に沿った篩板上の細隙を貫いて鼻腔に入り鼻粘膜の一部に分布する枝を出してから、鼻骨下縁を通り、顔面に達して鼻を被う皮膚に終末する。

上顎神経も純感覚性である。海綿静脈洞の外側壁内を前方に進み、正円孔を経て頭蓋腔を去り翼口蓋窩に入る。そののち上顎神経は翼口蓋窩の上部を横切り、下眼窩裂を経由して眼窩に入る。この段階で上顎神経本幹は眼窩下神経infraorbital nerveとよばれるようになる。この神経は眼窩の下壁に沿って、はじめは眼窩下溝、次に眼窩下管内を前方に走行して、最後に眼窩下孔を通り顔面の皮下にあらわれる。上顎神経の枝は、硬膜枝、神経節枝、後上歯槽神経、頬骨神経zygomatic nerve、中上歯槽神経、前上歯槽神経である。硬膜枝は中頭蓋窩の硬膜に分布する。神経節枝は2本の短い神経からなる。これらは翼口蓋神経節の翼口蓋窩における位置を固定する役割を果たす。神経節枝に含まれるものは、翼口蓋神経節を発して涙腺に向かう副交感系節後線維、および鼻腔、口蓋、咽頭からの感覚を伝える線維(翼口蓋神経節内を素通りする)などである。後上歯槽神経は翼口蓋窩で上顎神経から分かれ、上顎骨の後面に沿って下行しながらこれを貫く枝を出し、上顎洞粘膜、上顎臼歯群とこれに隣接する歯肉粘膜および頬粘膜などに分布する。頬骨神経は翼口蓋窩で上顎神経から分かれ、下眼窩裂を通り眼窩に入る。次に眼窩の外側壁に沿って上行したのち頬骨側頭神経zygomaticotemporal nerveと頬骨顔面神経zygomaticofacial nerveとに分かれる。頬骨側頭神経は頬骨後面にある小孔を出て側頭窩を経由し皮下にあらわれる。側頭部の皮膚などへの分布を示す。頬骨顔面神経は頬骨外側面にある小孔を出て顔面の皮下にあらわれ、頬骨を被う皮膚などへの分布を示す。中上歯槽神経は眼窩内で眼窩下溝を走行中の眼窩下神経から起こり、上顎洞外側壁を下行して、上顎の小臼歯群とこれに隣接する歯肉粘膜および頬粘膜に分布する。前上歯槽神経は眼窩内で眼窩下管を走行中の眼窩下神経より起こり、上顎洞前壁を下行して、上顎の犬歯および切歯に分布する。この神経からの終枝の一部は鼻腔底および鼻腔外側壁の粘膜にも分布する。

下顎神経は混合性であり、三叉神経の最大の枝をなす。この神経は三叉神経節の外側部から出て脳硬膜内葉を貫くと直ちに卵円孔を通り抜ける。三叉神経運動根をなしていた神経線維も三叉神経節下面より卵円孔に向かい、これを通り抜けた直後に下顎神経に合流する。このようにして形成された下顎神経の本幹は口蓋帆張筋(内側に位置する)と外側翼突筋(外側に位置する)とのあいだを下行しながら、比較的細い前枝anterior divisionと太い後枝posterior divisionに分かれる。本幹からの枝は、硬膜枝meningeal branch、内側翼突筋神経である。硬膜枝は卵円孔を通り頭蓋内(中頭蓋窩の硬膜)へと進む。内側翼突筋神経は内側翼突筋を支配するだけでなく、鼓膜張筋および口蓋帆張筋の支配にあずかる2本の細枝(ともに耳神経節内を貫通する)を出す。下顎神経前枝からの枝は、咬筋神経masseteric nerve、深側頭神経deep temporal nerves、外側翼突筋神経、頬神経buccal nerveである。咬筋神経は外側方に走行して、咬筋の深層表面に達する。深側頭神経は2本からなる。これらは上方に向かい、側頭筋の深層表面に達する。外側翼突筋神経は外側翼突筋の深層面より同筋内に入る。頬神経は感覚性の神経であり、外側翼突筋の2頭のあいだを通り、咬筋前縁より頬部に出て、頬の皮膚および粘膜に分布する枝を出す。下顎神経後枝からの枝は耳介側頭神経auriculotemporal nerve、舌神経lingual nerve、下歯槽神経inferior alveolar nerveである。耳介側頭神経は中硬膜動脈を囲むような2根性の起始を示す。この神経は下顎骨頚の内側面沿いに後方に走り、そののち顎関節の後方で耳下腺と接しながら、浅側頭動・静脈とともに上行し、側頭部の皮膚に分布する。なお、この神経は耳神経節otic ganglionから出る副交感系節後線維を受け、耳下腺にまで運ぶ役割も果たす。耳介側頭神経からは耳介、外耳道、鼓膜、耳下腺、顎関節、側頭部への感覚枝が出る。舌神経は内側翼突筋の外側面に沿って下歯槽神経の前に位置しながら下行し、そののち上咽頭収縮筋下縁の高さで前内側方へと向きを変え、茎突舌筋よりも外側かつ下顎第3大臼歯より内側の部位を進む。そののち、舌骨舌筋外側面に沿って前方に進み、顎下腺管の外側を通りながらこれを横切り、次に再び上前方に進み、顎下腺管の内側に位置を占めるようになる。舌神経はオトガイ舌筋の外側面上でも舌下腺で被われ、前上方になおも走りつつ、舌の前2/3の部位および口腔底の粘膜に分布する枝を分岐させる。なお、外側翼突筋下端部位で鼓索神経が舌神経に合する。下歯槽神経は感覚性と運動性の両種の神経線維を含む。この神経は蝶下顎靱帯sphenomandibular ligamentの外側面に沿って下行したのちに下顎孔を経て下顎管内に入り、下顎歯への枝を与えてからオトガイ孔を出て顔の皮膚に至る(オトガイ神経mental nerve)。下顎孔の直上で、この神経からは筋枝としての顎舌骨筋神経mylohyoid nerveが枝分かれする。顎舌骨筋神経は蝶下顎靱帯を貫き、下顎体の内側面に沿い(顎舌骨筋の外表面上を)前方に進みながら、顎舌骨筋および顎二腹筋前腹への枝を出す。

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4. 脳神経 VII の走行・分枝・支配について述べよ。

脳神経VII(顔面神経facial nerve)は、内側の運動根(顔面の表情筋群、アブミ骨筋、茎突舌骨筋、顎二腹筋後腹を支配する運動繊維からなる)と外側の中間神経(舌の前2/3、口腔底、口蓋からの味覚を伝える感覚神経線維および顎下腺、舌下腺、涙腺、鼻腔および口腔壁腺の分泌支配にあずかる副交感性節前線維からなる)よりなる。この神経は橋と延髄との境をなすような脳幹前面における溝から出て、内耳神経とともに後頭蓋窩を前外側方に走り、内耳口を経て内耳道内に進入する。そののち、顔面神経は内耳道底に開口している顔面神経管に入り、内耳の前庭部分のやや上方にあたる部位の側頭骨内を外側に向かい、鼓室内側壁の近くにまで達する。ここで顔面神経は膝神経節をなす膨らみを示しながら後方へと急に向きを変える。鼓室の後壁付近にまで達した顔面神経は、今度は乳突洞口の内側壁内で向きを下方に転じ、鼓室の後壁内を下行し(そのとき錐体隆起の基部を通過)、茎乳突孔stylomastoid foramenを通り抜けて皮下にあらわれる。そののち、顔面神経は前方に走り耳下腺内に進入し、そこで多数の終枝に分かれる。側頭骨岩様部内を通行するあいだでの顔面神経の分枝は、大錐体神経greater petrosal nerve、アブミ骨筋神経stapedius nerve、鼓索神経である。大錐体神経は膝神経節の部位で顔面神経本幹から分かれるものであり、翼口蓋神経節を目的地とする副交感系節前線維群を含む。これらの節前線維は翼口蓋神経節から発する副交感系節後線維(頬骨側頭神経と涙腺神経を通って涙腺に向かうもの、および鼻口蓋神経を通り鼻腺と口蓋腺に向かうものなど)に神経節内シナプスを介してつながる。大錐体神経には口蓋粘膜からの味覚を伝えるような感覚性神経線維も含まれている。この神経は側頭骨岩様部の上面に出て中頭蓋窩の底の溝を前内側方に走行し、三叉神経節の下面に沿って破裂孔に至る。破裂孔内で、内頚動脈壁の交感神経叢から出る深錐体神経と大錐体神経は合一し、翼突管神経を形成する。後者は翼突管内を前方に走って翼口蓋窩に達し、そこに存在する翼口蓋神経節に接続する。アブミ骨筋神経は鼓室の後壁内を下行中の顔面神経本幹から錐体隆起の基部付近で分かれるものであり、錐体隆起内に存在するアブミ骨筋へと向かう。鼓索神経は茎乳突孔よりやや上方の高さにおける顔面神経の本幹から枝分かれする。この神経は鼓室後壁部分を貫いて鼓室に入り、前ツチ骨ヒダおよび後ツチ骨ヒダに被われた状態でツチ骨柄基部を横切りながら前方に進み、錐体鼓室裂petrotympanic fissureから鼓室を出て側頭下窩に達し、そこで舌神経に合する。鼓索神経には舌の前2/3および口腔底の粘膜からの味覚を伝える神経線維(膝神経節をなす神経細胞体より発して末梢側に伸びるもの)、および副交感系の節前線維(顎下神経節にまで至るもの)が含まれる。顎下神経節から発する副交感系節後線維は顎下腺や舌下腺に向かう。顔面神経の終枝は、側頭枝、頬骨枝、頬筋枝、下顎縁枝、頚枝である。側頭枝は耳下腺の上面から出て前耳介筋、上耳介筋、後頭前頭筋の前頭部筋腹、眼輪筋、皺眉筋に向かう。頬骨枝は耳下腺の前面より出た、眼輪筋に向かう。頬筋枝は耳下腺の前面(耳下腺管より下方部分)より出て、頬筋、上唇の筋群、および外鼻孔周辺の筋群に向かう。下顎縁枝は耳下腺の前面より出て、下唇の筋群に向かう。頚枝は耳下腺の下面より出て首に至り、広頚筋に分布する。

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5. 脳神経 X の走行・分枝・支配について述べよ。

運動性および感覚性線維からなる脳神経X(迷走神経vagus nerve)は、首より腹部内臓に至るような広い範囲(心臓、肺、大部分の腸管など)への分布を示す。迷走神経は延髄前面におけるオリーブと下小脳脚との境界の溝より8〜10本の根によって、舌咽神経より下方から起こる。そののち迷走神経は小脳の下面に沿って後頭蓋窩を外側方に走り頚静脈孔の中央部を通過して頭蓋腔を出る。迷走神経の頚静脈孔通過中にみられる膨らみが上神経節を、頚静脈孔通過直後にみられる膨らみが下神経節を、それぞれなす。次に、迷走神経は副神経延髄根を受け入れた後、首では頚動脈鞘内をほぼ垂直に下行する。内頚動脈および総頚動脈と内頚静脈とのあいだの後側を下り、胸郭上縁で外方に行き、右側迷走神経は鎖骨下動脈の前、左側迷走神経は大動脈弓の前を通って胸腔に入り、両側とも気管支および心膜の後を経て食道の外側に出るが、下方にいくにつれ、次第に左側迷走神経は食道の前面、右側迷走神経はその後面に移り、食道に伴って横隔膜を貫き、腹腔に入って多くの枝に分かれる。ここまでの迷走神経の枝は、硬膜枝meningeal branch、耳介枝auricular branch、咽頭枝pharyngeal branch、上喉頭神経superior laryngeal nerve、心臓枝cardiac branches、反回神経recurrent laryngeal nerve、気管支枝、食道枝である。硬膜枝は上神経節から出て、後頭蓋窩における脳硬膜に分布する。耳介枝は上神経節から出て、頭蓋底内の小管を通り外耳道後壁にあらわれる。耳介の内側面および外耳道床をなす皮膚、さらには鼓膜外側面の粘膜の一部に分布する。咽頭枝は下神経節より起こるが、この中には副神経延髄部由来線維も含まれている。内頚動脈と外頚動脈のあいだを通り咽頭壁に達するが、そこで舌咽神経の枝や頚部交感神経幹ならの枝とともに咽頭神経叢pharyngeal plexusを形成したのちに茎突咽頭筋(舌咽神経支配)を除くすべての咽頭の筋、口蓋帆張筋(三叉神経支配)を除くすべての口蓋の筋、咽頭と口蓋の粘膜などに分布する。上喉頭神経は下神経節から起こり、内頚動脈の後方を下内側方に走行し、内枝と外枝に分かれる。内枝(内喉頭神経internal laryngeal nerveともよばれる)は甲状舌骨膜thyrohyoid membraneを上喉頭動脈とともに貫く。内枝に含まれるのは感覚性線維のみであり、それは喉頭入口の梨状陥凹から声帯にまで至る喉頭部分の粘膜からの感覚を伝える。外枝(外喉頭神経external laryngeal nerveともよばれる)は細いものであるが、上甲状腺動脈とともに下行し、甲状腺よりも深層の部位を経て輪状甲状筋に達し、この筋を支配する。心臓枝は2〜3本からなり、迷走神経より頚部の高さで分かれ、同神経に沿いながら下行して、胸腔内で交感神経とともに心臓神経叢を作る。反回神経について、右の体側では迷走神経が右鎖骨下動脈の前面を越えた直後に迷走神経より起こり、動脈の後方に向かう弧を描いたのちに気管と食道のあいだの溝の中を上行するが、そのとき甲状腺の側葉より深層の位置を下甲状腺動脈に接しながら通過する。この神経は下咽頭収縮筋の下縁の高さまで上行し、輪状甲状筋(上喉頭神経の外枝支配)を除くすべての喉頭筋、声帯より下方の喉頭粘膜、上部気管の粘膜に分布する。左の体側では迷走神経が胸腔内で大動脈弓の前面を越えた直後に反回神経が出る。すなわち、左の反回神経は動脈管索に支えられながら大動脈弓の下面から後面に回り、そののち気管と食道のあいだの溝を通りながら頚部を上行する。

腹部では、横隔膜の食道裂孔を通った迷走神経は、胃に対しては前後の位置を取る2神経幹、すなわち前および後迷走神経幹となり、これらの2神経幹はともに多くの枝を出す。その枝としては、胃枝、肝枝、腹腔枝がある。胃枝について、主として前迷走神経幹の枝は胃の前面に(前胃枝)、後迷走神経幹の枝は胃の後面に(後胃枝)いき、前胃神経叢および後胃神経叢を作る。肝枝は前迷走神経幹から出て小網の上縁を回り肝門を経て肝臓内に分布する。腹腔枝は腹腔神経叢に入り、これを介して、動脈に伴い胃以外の腹腔内膜に分布する。これに脾枝、腎枝、腸枝などがある。

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6. 脳神経 IX,XI,XII の走行・分枝・支配について述べよ。

脳神経IX(舌咽神経glossopharyngeal nerve)は混合性の神経である。すなわち、舌咽神経に含まれる運動性線維には茎突咽頭筋などの筋運動を支配するものと、耳下腺分泌を支配する副交感系節前線維とがある。また、舌咽神経に含まれる感覚性線維には舌の後1/3からの味覚を伝えるものと、咽頭粘膜からの感覚を伝えるものがある。舌咽神経は延髄の上部前面における、オリーブと下小脳脚とのあいだの溝より3〜4本の根によって起こり、小脳の下面に沿って前外側方に後頭蓋窩を進み、頚静脈孔の中央部を通り頭蓋腔を離れる。なお、頚静脈孔を通り抜けるとき舌咽神経は2ヵ所の膨らみを示し、これらは上神経節と下神経節(いずれも感覚性神経節)をなす。舌咽神経は頚動脈鞘内で頚部を下行するが、そののち茎突咽頭筋にからみつくようにしながら前方に走り、上および中咽頭収縮筋の境界部を通過する。舌咽神経の舌枝は顎下部に達する。舌咽神経からの枝は、鼓室神経tympanic nerve、頚動脈洞枝、筋枝、咽頭枝、舌枝である。鼓室神経は頚静脈孔の直下部で舌咽神経本幹より枝分かれしたのちに、鼓室の床を貫き、鼓室内側面の岬角表面で多数の枝に分かれて鼓室神経叢tympanic plexusを作る。この神経叢からは鼓室粘膜に分布する神経線維小束群とともに、1本の小錐体神経lesser petrosal nerveが出る。小錐体神経は耳神経節に向かう副交感系節前繊維を含み、鼓室を離れてから側頭骨岩様部の前面にある小孔を出て頭蓋腔に入る。そののち同神経は卵円孔を経由して頭蓋腔を去り、耳神経節に達する。頚動脈洞枝は頚動脈洞carotid sinusおよび頚動脈小体carotid bodyに分布する。なお、頚動脈洞は血圧受容装置をなしており、血圧上昇時の神経反射(心拍数減少、動脈拡張などをもたらす)をひき起こし、頚動脈小体は頚動脈内を流れる血液の酸素分圧低下や二酸化炭素分圧上昇を感受し、血圧、心拍数、呼吸数を増すような内臓反射をひき起こす。筋枝は茎突咽頭筋に分布する。咽頭枝は中咽頭収縮筋の外側面上で迷走神経の咽頭枝、交感神経幹からの咽頭枝とともに咽頭神経叢pharyngeal plexusを形成する。この神経叢から枝が咽頭各部に分散するが、舌咽神経由来の神経線維には咽頭、扁桃、軟口蓋の粘膜からの感覚を伝えるものも含まれる。舌枝は茎突舌筋の下から舌に入り、舌の後1/3の粘膜(有郭乳頭を含む)に分布して、一般感覚および味覚の伝導に関与する。

脳神経XI(副神経accessory nerve)は運動性の線維からなる神経である。延髄根(のちに迷走神経に入り軟口蓋、咽頭、喉頭の筋に分布する線維の集まり)と脊髄根(胸鎖乳突筋と僧帽筋に分布する線維の集まり)により副神経が形成される。延髄根は延髄前面におけるオリーブと下小脳脚との境界をなす溝より起こる4〜5本の細い神経束が合したものであり、迷走神経よりも下方に位置しながら、小脳の下面に沿って後頭蓋窩を外側方に走り脊髄根と合する。脊髄根は第1〜5頚髄節における脊髄前柱内に存在する神経細胞体から発する神経線維群が、頚髄の側面に出て上行しながら相集まり1本の神経幹となったものである。この神経幹は大後頭孔を通り抜けて頭蓋腔に進入し、そののち外側方に進んで副神経延髄根と合する。副神経の延髄根と脊髄根はたがいに合したまま頚静脈孔を通り抜けて頭蓋腔を出るが、その直後に両根はたがいに離れ、延髄根が迷走神経の下神経節に融合する。このような副神経延髄根に含まれる神経線維は、主として迷走神経の咽頭枝と反回神経の中を通行し、咽頭や喉頭の筋の運動支配にあずかる。副神経の脊髄根は上頚部を後方に走りながら内頚静脈を横切り、胸鎖乳突筋の深層側の表面に達してこの筋を支配するための枝を出す。しかし、副神経脊髄部は胸鎖乳突筋後縁の中央部を離れてさらに続き、肩甲挙筋表面で後頚三角を横切って僧帽筋にまで達する。

脳神経XII(舌下神経hypoglossal nerve)はすべての内舌筋、さらに茎突舌筋、舌骨舌筋、オトガイ舌筋に分布する運動神経線維で構成される。舌下神経は延髄前面における錐体とオリーブとのあいだの溝より発する、多数の小根が合したものである。舌下神経は後頭蓋窩を外側方に走り、舌下神経管を通り頭蓋腔を離れる。その後、内頚動脈と内頚静脈のあいだを通りながら下行して顎二腹筋後腹の下縁の高さにまで至るが、ここで前内側方へと向きを転じ、後頭動脈、内頚動脈、外頚動脈、舌動脈とそれぞれ交叉しながらさらに前上方に向かうが、そのとき顎二腹筋、茎突舌骨筋、顎舌骨筋よりも深層にあたる部位を通過する。最後に舌下神経は上方に向きを転じて舌尖にまで至る。舌下神経管を出てから間もなくのころに、頚神経叢からの小枝(C1、ときにC2成分も含む)が舌下神経に合流するが再び分離して頚神経ワナansa cervicalisの上根となり、甲状舌骨筋およびオトガイ舌骨筋に向かう。舌下神経の枝は、硬膜枝meningeal branch、下行枝descending branch、甲状舌骨筋への舌下神経枝nerve to the thyrohyoid、オトガイ舌骨筋への枝、口蓋舌筋(咽頭神経叢からの枝が支配)を除くすべての舌筋への枝、交通枝である。硬膜枝は舌下神経管内で枝分かれしたのちに、後頭蓋窩の硬膜に向かう。下行枝はしばらくのあいだ舌下神経と一緒に走行していたC1神経線維群が、舌下神経が顎二腹筋後腹のすぐ下で前方に向きを転じるところで、舌下神経から再び離れることにより生じる下行性分枝であり、内頚動脈と総頚動脈の前方にあたる位置を保ちながら頚動脈鞘沿いに下行したのちに、C2およびC3成分で構成される神経枝(頚神経叢から出るもの)と合流し頚神経ワナを作る。頚神経ワナから分かれる筋支配枝が肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋に向かう。甲状舌骨筋への枝もC1成分からなる神経枝であり、舌下神経が顎舌骨筋の深層を経過するあいだに舌下神経から分かれ、甲状舌骨筋まで下行する。オトガイ舌骨筋への枝もC1由来のものである。舌筋への枝は茎突舌筋、舌骨舌筋、オトガイ舌筋、内舌筋群に分布する。交通枝は舌側部における、舌下神経と舌神経との吻合形成にあずかるものである。

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7. 頭頚部の自律神経(神経節もふくむ)とその支配についてのべよ。

心臓、平滑筋、腺など随意的調節の不可能な身体部分の神経支配に関与するものが自律神経系であり、交感性と副交感性の2種類に大別される。

自律神経系のうちの交感性のものは、身体を危急事態にそなえるために適した状態にする働きを示す。すなわち、交感神経の緊張は心拍数の増加、末梢血管収縮による血圧の上昇などを来す。その結果、血流の身体内の配分に変化が起き、皮膚や腸管領域の血流量が減少し、脳や心臓、さらには骨格筋への血流量が増加する。同時に交感神経緊張により腸管壁の蠕動運動が抑制され、括約筋の収縮が起こる。頭頚部での交感神経についてこれから述べていく。頚部交感神経幹は内頚動脈または総頚動脈の後部で、頚動脈鞘と椎前葉とのあいだの深筋膜部分に埋もれた形で存在する。頚部交感神経幹には3個の膨らみがあり、それらは上頚神経節superior cervical ganglion、中頚神経節middle cervical ganglion、下頚神経節inferior cervical ganglionとよばれる。上頚神経節からは、内頚動脈神経internal carotid nerve、第1〜4頚神経に向かう灰白交通枝、総頚動脈および外頚動脈の壁に向かう枝(外頚動脈神経)、脳神経IX、X、XIIに進入する枝、咽頭枝、上心臓神経superior cardiac nerveが枝分かれする。内頚動脈神経は上頚神経節の上端から出て内頚動脈に伴ってこれを包む内頚動脈神経叢internal carotid plexusを作り、頚動脈管を出て海面静脈洞中を進み、動脈の分岐に従って分岐する。外頚動脈神経は外頚動脈神経叢および総頚動脈神経叢を作る。外頚動脈壁に進入した神経線維は、外頚動脈の枝分かれに沿う分布を示す。咽頭枝は舌咽神経および迷走神経とともに咽頭神経叢pharyngeal plexusを形成する。上心臓神経は上頚神経節を出てから総頚動脈の後方を通りながら下行し、胸腔内の心臓神経叢に入る。中頚神経節からは、第5,6頚神経に向かう灰白交通枝、甲状腺枝、中心臓神経middle cardiac nerveが枝分かれする。甲状腺枝は下甲状腺動脈に沿って走り、甲状腺内に入る。中心臓神経は総頚動脈の後方を下行し、胸腔内の心臓神経叢に入る。下頚神経節からは、第7,8頚神経に向かう灰白交通枝、鎖骨下動脈および椎骨動脈の壁に沿う走行を示す動脈壁神経、下心臓神経inferior cardiac nerveが枝分かれする。下心臓神経は鎖骨下動脈の後方を下り、胸腔内の心臓神経叢に入る。中頚神経節と下頚神経節とのあいだの頚部交感神経幹部分は、2本あるいはそれ以上の数の細い神経索で作られており、これらの神経索のうちで最前方部の位置を占めるものは下行して鎖骨下動脈の前面をいったん越えたのちに動脈壁の下面から後面へと回るように、再びやや上行する(鎖骨下ワナの形成)。上記以外の交感神経として、終神経が嗅神経に混じって、鼻粘膜に分布する。この神経は嗅球の近くで終神経節を作る。

副交感性の自律神経部分の活動は身体のエネルギーを保存したり補充したりするのに役立つ。すなわち、心拍数は減じ、腸の蠕動や腺の活動が高まり、括約筋は弛緩する、といった状態が副交感神経の結果得られるのである。頭頚部の副交感神経についてこれから述べていく。動眼神経の副交感神経線維は毛様体神経節を作り、短毛様体神経を通って、瞳孔括約筋、毛様体筋を支配する。顔面神経の副交感神経線維は大錐体神経を通って、翼口蓋神経節を作り、涙腺、口蓋腺、鼻腺に分布する。また、鼓索神経・舌神経を経由して、顎下神経節に入り、顎下腺、舌下腺、小唾液腺に分布する。舌咽神経の副交感神経線維は鼓室神経・小錐体神経を通って、耳神経節に入り、耳下腺に分布する。迷走神経の副交感神経線維は心臓、肺、胃、腸、肝臓、腎臓、副腎などの胸部・腹部内臓を支配する。

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8. 副鼻腔の広がりと開口についてのべよ。

上顎骨、前頭骨、蝶形骨および篩骨の内部の空洞が副鼻腔paranasal sinusをなす。そして、副鼻腔は上顎洞maxillary sinus、前頭洞frontal sinus、蝶形骨洞sphenoidal sinus、篩骨洞ethmoidal sinusより成る。

上顎洞は底面を鼻腔外側壁に向け、尖端を上顎骨頬骨突起の方向に向けるような錐体の形を示す。上顎洞の上壁は眼窩の下壁にほかならず、また上顎洞の下壁は上顎骨の歯槽突起部分により作られる。上顎洞は半月裂孔を介した中鼻道への開口を示す。

2個の前頭洞が前頭骨内に存在する。個々の前頭洞はほぼ三角形(眉弓の内側端部位より上後方に、眼窩上壁の内側縁に沿うように伸び出す)を示す。また、個々の前頭洞は同側の中鼻道に、篩骨漏斗を介してつながる。

蝶形骨洞も蝶形骨の体部内で対性に存在する。個々の蝶形骨洞は同側鼻腔の蝶篩陥凹に開口する。

篩骨洞は鼻腔と眼窩のあいだに介在する篩骨部分の内部に存在するが、眼窩より1枚の薄い骨板で隔てられるのみである。篩骨洞を3部分(前部、中部、後部)に分けることができる。篩骨洞の前部は篩骨漏斗、中部は中鼻道におけるブラ(篩骨胞)の上縁付近、後部は上鼻道をそれぞれ介して鼻腔につながる。

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9. 中耳・耳管の構造について述べよ。

側頭骨岩様部に存在する鼓室(中耳)の壁面は粘膜で被われる。鼓室内には耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)があり、鼓膜の振動を内耳の外リンパに伝達する役割を果たす。鼓室は斜め方向に長い細隙状の空間であって、その長軸が鼓膜面の傾きにほぼ一致したものとなっている。鼓室は前方で耳管を介し咽頭につながり、後方では乳突洞mastoid antrumにつながる。鼓室の天井は側頭骨岩様部の一部をなす薄い骨板(鼓室蓋)で形成される。この骨板は鼓室を中頭蓋窩における大脳半球やこれを被う髄膜から隔てるものである。鼓室の床をなすものも薄い骨板であるが、ときにこれが欠如したり、あるいは部分的に繊維組織に置きかえられていることがある。鼓室の床の下方には内頚静脈の上球が近接する。鼓室の前壁をなす薄い骨板の前方には内頚動脈が近接している。また、鼓室前壁の上方部には2個の穴が存在し、下方の穴は耳管に通じる穴であり、上方のものは鼓膜張筋を通す管に続く穴である。これらの2つの穴のあいだを境する骨板(筋耳管中隔)は鼓室の内側壁に沿って伸び出し、棚状の突起を形成する。鼓室の後壁の上方部には乳突洞に通じる大きな穴が存在する。その下方には小さな円錐形の突起(錐体隆起)があり、突起先端からはアブミ骨筋の腱があらわれる。鼓室の外側壁の大部分は鼓膜で形成される。鼓膜は線維性結合組織を主体とするような薄い膜であり、灰白色に光るような外観を示す。鼓膜はその外表面が下前外側方を向くような傾きを示す。鼓膜の外表面は陥凹し、その陥凹の中心部をなす鼓膜臍umboの裏側(鼓膜の内表面)にはツチ骨柄の先端が付着する。鼓膜はほぼ円形で、その直径が約1cmである。鼓膜の周縁の大部分はやや肥厚し、骨面の溝にはまり込む形となっているが、鼓膜の上縁部では骨面の溝が欠如し、代わりに骨面に1つの切痕がみられる。この骨切痕の両端部からは1本ずつの粘膜ヒダ(前ツチ骨ヒダと後ツチ骨ヒダ)がツチ骨の外側突起にまで伸びる。これらのヒダで囲まれる小さな三角形の鼓膜部位は弛緩しているため、鼓膜弛緩部と呼ばれる。これ以外の鼓膜部分は、鼓膜緊張部と呼ばれる。ツチ骨柄は鼓膜の内表面に固定されている。鼓室の内側壁は、内耳の外側壁で形成される。この壁面の大部分は丸みを帯びた突出面、すなわち岬角promontory(蝸牛の基底回転部に対応するもの)で占められる。岬角の上後方部には前庭窓(卵円形)があり、これにアブミ骨底がはまり込む。前庭窓の奥には内耳における前庭階を満たす外リンパが存在する。また、岬角の下後方部には蝸牛窓(円形)があり、これは第2鼓膜とよばれる線維性の膜で閉ざされている。蝸牛窓の奥には鼓室階の盲端部を満たす外リンパが存在する。鼓室前壁における筋耳管中隔は鼓室の内側壁に沿って鼓膜張筋の下面を支える棚状の骨板として後方に伸びるが、その後端の部位(岬角の上方部)でサジ状突起とよばれる一種の滑車を作り、鼓膜張筋の停止腱がこの滑車で外側方に向きを変えてツチ骨柄に付着しうるようになっている。また、岬角と前庭窓より上方における鼓室内側壁の後方部には水平方向に走る丸みを帯びた隆起(顔面神経管隆起)がある。この隆起を後方にたどると乳突洞入口をなす空間の内側面における隆起、さらには錐体隆起の基部付近を下行する隆起につながる。

耳管は鼓室の前壁の穴より下前内側方に走り、咽頭の鼻部に開く管である。後方1/3の耳管部分は骨性壁に囲まれるが、前方2/3の耳管部分は軟骨により囲まれるのみである。また、耳管は上咽頭収縮筋の上縁を越えて走行したのちに咽頭の鼻部に開口する。耳管は鼓室内の気圧と咽頭の鼻部内腔の気圧とを等しくさせるうえに役立っている。

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10. 眼窩の壁を構成する骨と眼窩内を通る血管についてのべよ。

眼窩は錐体形(錐体底が前方、錐体頂が後方)であるような、前方に開いた1つの空間である。眼窩の上縁は前頭骨(眼窩上神経・血管を通す切痕あるいは小孔をそなえる)により、外側縁は前頭骨と頬骨からの突起により、下縁は頬骨と上顎骨により、内側縁は上顎骨と前頭骨からの突起により、それぞれ形成される。眼窩の上壁は前頭骨の眼窩面(前頭蓋窩の床をなす)により、外側壁は頬骨と蝶形骨大翼により、下壁は上顎骨体眼窩面(上顎洞の天井をなす)、内側壁は前方より後方に向かい上顎骨前頭突起、涙骨、篩骨眼窩板(篩骨洞の天井をなす)、蝶形骨体により、それぞれ形成される。

眼窩前口の上縁には眼窩上切痕があり、眼窩上神経や眼窩上動・静脈を通過させている。眼窩の床をなす上顎骨体眼窩面には眼窩下溝と眼窩下管があり、眼窩下神経や動静脈を通過させる。上顎骨と蝶形骨大翼のあいだのすき間が下眼窩裂であり、これは翼口蓋窩と眼窩との交通路をなす。上顎神経とその1枝である頬骨神経、下眼静脈、交感神経などが下眼窩裂を通過する。眼窩の後端近くにおける、蝶形骨の大翼と小翼のあいだのすき間である上眼窩裂は、眼窩と中頭蓋窩の交通路である。涙腺神経、前頭神経、滑車神経、動眼神経、外転神経、鼻毛様体神経、上眼静脈などが上眼窩裂を通る。やはり眼窩の後端近くにある視神経管も、眼窩と中頭蓋窩をつなぐ交通路であって、視神経および眼動脈を通過させる。

眼動脈は海綿静脈洞通過後の内頚動脈の枝であり、視神経の下外側に沿いながら視神経管を通り眼窩を前方に進むが、しだいに内側方への進路をとり、視神経および鼻毛様体神経を上方で横切り、眼窩内側壁に達してから多数の枝に分かれる。眼動脈の枝としては、網膜中心動脈、筋枝群、毛様体動脈、涙腺動脈、滑車上動脈、眼窩上動脈、前篩骨動脈、後篩骨動脈、硬膜枝、内側眼瞼動脈、鼻背動脈がある。網膜中心動脈は細い動脈であるが、視神経の髄膜鞘を貫いて視神経の内部を前方に走り、視神経円板の中心を通って眼球内に入る。ここで網膜に分布する多数の動脈枝に分かれる。毛様体動脈は前方群と後方群に分けられるような複数の動脈の総称名である。滑車上動脈および眼窩上動脈は額の皮膚に分布する。眼静脈は上眼静脈と下眼静脈よりなる。両静脈は後方に走り、上眼窩裂を通って海綿静脈洞へと接続するが、そのほかに上眼静脈は前方で顔面静脈と交通を示し、下眼静脈も下眼窩裂を通り翼突筋静脈叢と通じる交通路を有する。

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11. 外頚動脈の走行と枝の分布についてのべよ。

外頚動脈external carotid arteryは総頚動脈の2本の終末枝のうちの一方をなすものであり、頚部と顔面、それに頭包、舌、上顎などに血流を供給する。外頚動脈は甲状軟骨上縁の高さから始まり、上行して下顎骨頚の高さの耳下腺組織内で浅側頭動脈と顎動脈とに分岐して終わる。外頚動脈の起始部は内頚動脈より内側に位置するが、上行するにしたがい外頚動脈は内頚動脈の後方、さらには外側へと位置を変える。

外頚動脈の枝は、上甲状腺動脈superior thyroid artery、上行咽頭動脈ascending pharyngeal artery、舌動脈lingual artery、顔面動脈facial artery、後頭動脈occipital artery、後耳介動脈posterior auricular artery、浅側頭動脈superficial temporal artery、顎動脈maxillary arteryである。

上甲状腺動脈は外頚動脈起始部付近の前面より起こり、ほぼ垂直下方に向かう走行を上甲状腺静脈とともに示し、上喉頭神経外枝より浅層をこれと伴行しながら甲状腺の上極部分に入る。このような走行中に上甲状腺動脈から胸鎖乳突筋へ向かう枝、および上喉頭動脈superior laryngeal artery(甲状舌骨膜を上喉頭神経内枝とともに貫く)が出る。

上行咽頭動脈は外頚動脈の後面より起こる細長い動脈である。咽頭壁を上行しながら、咽頭に向かう多数の枝を出す。

舌動脈はほぼ舌骨大角尖の高さで外頚動脈の前面より起こり、弧を描きながら前上方に走るが、そのとき舌下神経と交叉する。次に舌動脈は前方へと向きを変え、舌骨舌筋よりも深部にあたる場所を走行したのち再び上行して舌尖部まで至る。また、舌動脈は、舌背部を上行する舌背枝や、舌下腺およびその周辺部に分布する舌下動脈sublingual arteryを出す。

顔面動脈は舌骨大角尖の高さよりもやや上方で、外頚動脈の前面で起こる。顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋よりも深層の部位を弧を描きながら上行し、顎下腺後面上の溝の中を走る。顎下腺の表面から下顎骨下縁(咬筋前縁と交叉する部位)にかけて曲線を描くように走行し、そのまま蛇行を示しながら口角部に向かうが、その際には広頚筋および笑筋により被われる。口角部より上方では頬骨筋群と上唇挙筋とに被われながら、顔面動脈は鼻側部を経て内眼角の部位まで達し、眼動脈からの枝と吻合する。顔面動脈の枝は、上行口蓋動脈ascending palatine artery、扁桃動脈、腺枝(顎下腺に分布)、オトガイ下動脈submental artery、下唇動脈inferior labial artery、上唇動脈superior labial artery、外側鼻動脈lateral nasal arteryである。上行口蓋動脈は咽頭の側面を上行し、頭蓋底に至る。扁桃動脈は上咽頭収縮筋を貫き、扁桃への血流の大部分を供給する。オトガイ下動脈は下顎骨体下縁に沿って前方に走り、オトガイ部および下唇部に分布する。下唇動脈は口角部付近で生じる顔面動脈からの枝である。左右の下唇動脈は下唇内をそれぞれ内側方に向かい、正中部で互いに吻合する。上唇動脈も口角部付近より起こり、上唇内を走りながら鼻翼や鼻中隔へも枝を出す。外側鼻動脈は鼻側部で顔面動脈より出るものであり、鼻側部および鼻尖への枝を出す。

後頭動脈は顔面動脈起始部の高さで外頚動脈の後面より出て、その直後に舌下神経と交叉する。そののち、後頭動脈は上行して後頚三角の頂上部に達し、胸鎖乳突筋と僧帽筋のあいだを通って後頭部に向かう。後頭部では大後頭神経との伴行を示す。

後耳介動脈は顎二腹筋後腹上縁の高さで外頚動脈の後面より起こり、上後方に走行して耳介に達する。

浅側頭動脈は耳介の前方を耳介側頭神経と並びながら上行する。この動脈は前枝と後枝に分岐し、前頭部および側頭部の皮膚に分布する。

顎動脈は耳下腺内より出てから下顎骨頚の後部を上行したのちに前方に向きを変え下顎骨頚の内側を通り外側翼突筋下縁部へと達する。そののち、側頭下窩を出て、翼上顎裂pterygomaxillary fissureを通り、翼口蓋窩に達する。額動脈の枝は、下歯槽動脈、中硬膜動脈、外耳道および鼓膜に向かう小枝群、咀嚼筋群に向かう筋枝群、後上歯槽動脈、眼窩下動脈、大口蓋動脈、咽頭枝、蝶口蓋動脈である。

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12. 喉頭の構造と声門の開閉について述べよ。

喉頭は上方では咽頭の下部(喉頭部)に、下方では気管に、それぞれ接続する。喉頭の骨格をなすものはすべて軟骨であり、種々の軟骨が線維性膜や靱帯、さらには骨格筋でたがいに結ばれたり、あるいは動き合えるように仕組まれている。また、喉頭腔の自由表面をなす部位は粘膜で被われている。甲状軟骨thyroid cartilageは硝子軟骨に属す。その右板と左板(甲状軟骨板と総称)の後縁の上端には上角、下端には下角がそれぞれ存在する。また、甲状軟骨板の外表面には斜線oblique lineがあり、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋、下咽頭収縮筋の付着部位となっている。輪状軟骨cricoid cartilageも硝子軟骨に属する。指輪状の形を示し、甲状軟骨の下端に接するような位置を占める。輪状軟骨の前方部は丈が比較的低く、弓部archをなす。輪状軟骨の後部は丈が高く、板部laminaをなす。輪状軟骨の両側面には1個ずつの円形関節面があり、この面と甲状軟骨下角が輪状甲状関節をなす。また、輪状軟骨の上面には、左右の輪状披裂関節のための関節面が存在する。ここにあげた2種類の関節は、いずれも滑膜をそなえている。披裂軟骨arytenoid cartilageは小型なピラミッド状の対性軟骨である。左右の披裂軟骨が喉頭の後壁における輪状軟骨の板部の上縁外側部に位置している。個々の披裂軟骨は上方に尖部、下方に底部をもつ。尖部の上には小角軟骨corniculate cartilageがのる。披裂軟骨底は輪状披裂関節の形成にあずかる。披裂軟骨底からは2本の突起が水平方向に伸びるが、そのうちの1本は前方に伸びる声帯突起vocal process(声帯がこれに付着する)であり、残りは外側方に伸びる筋突起muscular process(後輪状披裂筋と外側輪状披裂筋がこれに付着する)である。小角軟骨は左右に1個ずつ存在する小軟骨であり、披裂軟骨の尖部と関節を介して連なり、披裂喉頭蓋ヒダの付着部をなす。楔状軟骨も対性の小さな軟骨であり、左右の披裂喉頭蓋ヒダの内部に1個ずつ位置している。これらも披裂喉頭蓋ヒダの付着部をなす。喉頭蓋epiglottisは木の葉のような形をした1枚の弾性軟骨板であり、舌根部の後方に位置を占める。喉頭蓋は前方で舌骨の体部につながり(舌骨喉頭蓋靱帯による)、また甲状喉頭蓋靱帯により甲状軟骨の後面につながる。喉頭蓋の上縁は自由縁となっており、ここを乗り越えた粘膜は、前方で舌根部を被う粘膜に移行するが、その際に1本の正中舌喉頭蓋ヒダと2本の外側舌喉頭蓋ヒダが形成される。これらの2種類のヒダのあいだの陥凹部分を喉頭蓋谷と称する。甲状舌骨膜thyrohyoid membraneは甲状軟骨の上縁と、舌骨体の後面および舌骨の大角の後面をつなぐ線維性膜である。この膜の正中部分は厚みを増しており、そのため正中甲状舌骨靱帯median thyrohyoid ligamentとよばれる。また、この膜の後縁部分(左右)も厚みを増しているために外側甲状舌骨靱帯lateral throhyoid ligamentとよばれる。輪状気管靱帯cricotracheal ligamentは輪状軟骨下面と第1気管輪とをつなぐものである。喉頭弾性膜は喉頭の粘膜下に広がる膜である。この膜の上方部分は四角膜quadrangular membraneとよばれ、喉頭蓋と左右の披裂軟骨のあいだをつなぐ比較的厚い弾性膜部分となっている。四角膜の下縁をなすのが左右の室靱帯vestibular ligamentである。喉頭弾性膜のうちの下方部分は輪状甲状靱帯cricothyroid ligamentをなす。この靱帯の前部は厚みを増しており、その名が示すとおり輪状軟骨と甲状軟骨下縁をつなぐ。しかし、輪状甲状靱帯の外側部は輪状軟骨の上縁から始まるが、甲状軟骨下縁に付着することなく甲状軟骨板の内面に沿いながらさらに上方に広がり、その最上端の部位が肥厚を示して強大な声帯靱帯vocal ligamentをなす。左右の声帯靱帯の前端部はそれぞれ甲状軟骨の内面に付着する。また、左右の声帯靱帯の後端部はそれぞれ同側の披裂軟骨の声帯突起に付着する。舌骨喉頭蓋靱帯hyoeiglottic ligamentは喉頭蓋を舌骨に結びつける。また、甲状喉頭蓋靱帯thyroepiglottic ligamentは喉頭蓋を甲状軟骨に結びつける。喉頭の入口、すなわち喉頭口は後上方に向きながら、喉頭腔に接している。喉頭口から始まり、輪状軟骨下端の高さに至るまでの気道部分が喉頭腔である。これを、上方部、中間部、下方部に分けることができる。上方部をなす前庭vestibuleは喉頭口から左右の前庭ヒダvestibular foldの部位までで、そこから左右の声帯ヒダvocal foldの高さまでが中間部で、下方部は輪状軟骨下端の高さまでである。

声門を開く筋は後輪状披裂筋(反回神経支配)であり、閉じる筋は甲状披裂筋、外側輪状披裂筋、斜披裂筋、横披裂筋(いずれも反回神経支配)である。

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13. 甲状腺とそのまわりの構造について述べよ。

甲状腺thyroid glandは右葉と左葉、および両葉をつなぐ峡部isthmusで形成される。甲状腺は非常に血管に富み、その周囲は深筋膜気管前葉の一部をなす被膜で被われる。すなわち、この被膜は甲状腺を気管および喉頭につなぎとめる役割を果たしている。左葉と右葉はそれぞれ西洋梨形(頂上部は上方に伸びて甲状軟骨斜線の高さまで達し、底部は第4まては5第5気管輪の高さに位置する)を呈する。甲状腺峡部は正中線に沿って第2〜4気管輪の高さに位置している。峡部からさらに上方に伸びる錐体葉pyramidal lobeがしばしば存在することがあるが、これは左体側にみられることが多い。そのような錐体葉からさらに上方に線維性または筋性の帯状構造が伸びて舌骨に付着するのもしばしば観察される。この場合の筋性帯状構造を甲状腺挙筋levator glandulae thyroideae muscleと称することがある。甲状腺の右葉または左葉の前外側方に近接するものとしては胸骨甲状筋、肩甲舌骨筋上腹、胸骨舌骨筋、胸鎖乳突筋前縁があげられる。甲状腺両葉の後外側方には総頚動脈、内頚静脈、迷走神経を容れる頚動脈鞘が存在する。また、甲状腺両葉の内側方には喉頭、気管trachea、咽頭、食道esophagusが近接する。甲状腺の両葉の丸みを帯びた後縁付近の部位には上皮小体parathyroid glandsが存在するほか、上および下甲状腺動脈のあいだでの吻合もみられる。甲状腺峡部の前方には胸骨甲状筋、胸骨舌骨筋、前頚静脈、筋膜および皮膚が、後方には第2〜4気管輪が、それぞれ近接する。また、甲状腺峡部の上端部では上甲状腺動脈の終枝がたがいに吻合を示す。

上皮小体は黄褐色の卵形小体であり、通常はその4個が甲状腺被膜内において甲状腺後縁に近接した部位に存在する。2個の上上皮小体superior parathyroid glandsは甲状腺後縁の中央部の高さで比較的規則正しく見出されるのに対し、2個の下上皮小体inferior parathyroid glands(通常は甲状腺の下極の高さに存在)は甲状腺組織内に埋もれていたり、あるいは甲状腺被膜外に位置していたりすることがある。

気管は可動性に富む管状の器官であり、喉頭の輪状軟骨下端より始まり、首の正中部を下行する。胸腔内に達した気管は第4胸椎と第5胸椎の椎間板の高さで左右の主気管支に分岐して終わる。弾性に富む気管壁内には馬蹄状の形の硝子軟骨が埋め込まれており、気管内腔の広さを保つうえに役立っている。馬蹄形の開放部分(硝子軟骨が欠如)は気管の後壁をなす場所に相当し、その場所を平滑筋である気管筋trachealis muscleが埋めている。

食道は約25cmの長さの筋肉性の壁を持つ管であり、咽頭と胃とをつなぐ消化管部分をなす。すなわち、食道は輪状軟骨の高さ(第6頚椎体の高さ)から始まり、最初は正中線上にあるが頚部を下行中にしだいに左側による傾向を示す。

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14. 頸神経叢の枝とその分布・支配について述べよ。

頚神経叢は第1〜4頚神経の前枝からの枝が肩甲挙筋および中斜角筋の起始部の前面をなす部位でたがいにからみ合うことにより形成される。頚神経叢は首の深筋膜椎前葉により被われる。また、頚神経叢の一部は頚動脈鞘内の内頚動脈に近接する。頚神経叢から末梢に向かう神経を皮枝、首の筋を支配するもの、横隔膜に分布するもの、という3群に大別することができる。

皮枝には、小後頭神経lesser occipital nerve、大耳介神経great auricular nerve、頚横神経transverse cutaneous nerve、鎖骨上神経supraclavicular nerves が該当する。小後頭神経(C2)は副神経と交叉しながら胸鎖乳突筋後縁を上行し、後頭部外側面および耳介内側面の皮膚に分布する。大耳介神経(C2,3)は胸鎖乳突筋を越えて上行し、下顎角を被う皮膚に向かう枝、耳下腺を被う皮膚に向かう枝、耳介の内・外側面を被う皮膚に向かう枝に分岐する。頚横神経(C2,3)は胸鎖乳突筋後縁の中央部付近より出て、同筋を横切り前方へ進み上枝と下枝に分岐する。これら上・下枝は首の前面と外側面をなす皮膚に分布する。鎖骨上神経(C3,4)も胸鎖乳突筋後縁から出て後頚三角の部位を下行し、前胸部と肩の皮膚(第2肋骨の高さまで)に分布する。すなわち、この神経の内側成分(内側鎖骨上神経medial supraclavicular nerve)は鎖骨内側端を越えて正中部に至るまでの前胸部皮膚に向かう。中間成分(中間鎖骨上神経intermediate supraclavicular nerve)は鎖骨中央部を越えて前胸部皮膚へ、外側成分(外側鎖骨上神経lateral supraclavicular nerve)は鎖骨外側端を越えて肩甲棘部にまで至る肩の皮膚へ、それぞれ向かう。

首の筋を支配するものとしては、椎前筋群、胸鎖乳突筋(C2,3由来であり筋感覚を伝える)、肩甲挙筋(C3,4由来)、僧帽筋(C3,4由来であり筋感覚を伝える)などに分布する神経が該当する。さらに、C1由来の末梢枝(一時的に舌下神経に合流し、舌下神経の下行枝として再び舌下神経を離れるようなったもの:頚神経ワナansa cervicalisの上根をなす)とC2,3由来の末梢枝(頚神経ワナの下根をなす)が頚神経ワナを介して肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋のうちのいずれかに向かう。舌下神経と一緒に走行するC1由来線維のうちの別のグループは、甲状舌骨筋枝あるいはオトガイ舌骨筋枝という形で舌下神経から離れ、それぞれの筋に進入する。

横隔膜に分布するものとしては、横隔神経phrenic nerveが該当する。横隔神経は横隔膜内の筋線維の運動を支配する神経線維のほかに、感覚性神経線維および交感性節後線維をも含む。この場合の感覚性線維には筋感覚を伝えるもの(小部分をなす)と横隔膜腱中心部の上面を被う胸膜および下面を被う腹膜からの感覚を伝えるもの(大部分をなす)が区別される。横隔神経内に含まれる感覚性線維群の一部は縦隔胸膜および心膜にも分布する。横隔神経は頚神経叢における第3〜5頚神経成分が輪状軟骨の高さの前斜角筋外側縁部で相集まることにより形成される。横隔神経はまず前斜角筋の前面をほぼ垂直に下行するが、そのとき深筋膜椎前葉で被われる。そののち横隔神経は鎖骨下動脈の前方、かつ腕頭静脈起始部の後方を通り胸腔に進み、横隔膜へ向かう。

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II.上肢、背について

1. 椎骨を連結する靭帯や関節について述べよ。

大後頭孔の両側に位置する左右の後頭顆occipital condylesと環椎の左右の外側塊上面とのあいだで左右の環椎後頭関節atlanto-occipital jointsが形成される。この関節は滑膜性関節である。環椎後頭関節を補強する靱帯として、前環椎後頭膜と後環椎後頭膜があげられるが、前者は脊柱の前縦靱帯の上方への続きをなすものにほかならず、環椎の前弓を大後頭孔前縁に結びつける役割を果たす。後環椎後頭膜は環椎の後弓を大後頭孔後縁に結びつける役割を果たす。この関節は頭の伸展・屈曲をもたらすが、回旋はもたらさない。

環椎の歯突起と環椎の前弓とのあいだの滑膜性関節(正中環軸関節)と、軸椎と環椎の左右の外側塊間の2個の滑膜性関節(外側環軸関節)が環軸関節atlanto-axial jointsの中に含まれる。これらの3関節を補強する靱帯のうちで歯尖靱帯apical ligamentは正中部にあり、歯突起を大後頭孔に結びつける。この靱帯の両側には翼状靱帯alar ligamentsがあり、歯突起を後頭顆内側面に結び付けている。十字靱帯cruciate ligamentは強い横束と弱い縦束とからなるものであり、その横束は環椎の外側塊内面(左右)のあいだを結ぶ帯をなし、歯突起を環椎前弓に対して押さえつける役割を果たす。また、縦束は軸椎体の後面と大後頭孔前縁を縦につなぐ。環椎横靱帯は環椎の左右の外側塊のあいだに張り、その前面中央には線維軟骨を帯びて歯突起と関節するとともに、歯突起の後方への移動を防ぐ。蓋膜は脊柱の後縦靱帯の上方への延長物にほかならないのであるが、歯突起、歯尖靱帯、翼状靱帯および環椎十字靱帯の後面を被ったのちに、大後頭孔前壁をなす後頭骨部分に付着する。環軸関節は環椎の広範囲な回旋をもたらす。

椎骨体の上面と下面は薄い硝子軟骨板で被われ、この軟骨板に椎間板が接続する形で、次々に椎骨体が連ねられる。第3〜6頚椎では隣接する椎体が、椎間板の外側部で接し合い、滑膜性の小関節を形成する。個々の椎間板に周辺部、すなわち線維輪とよばれる部分と中心部、すなわち髄核とよばれる部分を区別する。線維輪は線維性軟骨で作られるが、そこに含まれる膠原線維は全体として同心円状の配列を示すのみならず、椎骨間をつなぐように斜めに走行する膠原線維の小束がたがいちがいに交錯するのも観察される。また、線維輪の辺縁部にある膠原線維は前縦靱帯および後縦靱帯への強い付着を示す。髄核は椎間板の中央部よりもやや後方に寄った部位を占めており、常に圧力にさらされる状態になっている。椎間板と椎骨体との境界部では、椎骨体表面が硝子軟骨の薄板で被われ、この板と髄核をなす半水様物質塊とが触れ合うことにより、個々の椎骨がたがいにわずかに動き合うことが可能になる。第1頚椎と第2頚椎のあいだ、仙骨内および尾骨内には椎間板が存在しない。椎体間の軟骨結合あるいは滑膜性関節を補強する靱帯として、前縦靱帯および後縦靱帯をあげることができる。これらは頭蓋から仙骨までを縦に走りながら、各椎骨体の前面および後面を結びつけるものである。前縦靱帯は幅が広く、椎体および椎間板の前面と側面に強い結合を示す。これに対して後縦靱帯は比較的幅狭いものであり、椎間板の後面に結合する。これらの2靱帯は椎体をたがいにつなぐほかに、椎体間のわずかな動きを可能にしている。

関節突起間の関節は滑膜性であり、硝子軟骨が関節面を被い、さらに関節腔を境する関節包が存在する。この関節を補強する靱帯としては、棘上靭帯supraspinous ligament、棘間靱帯interspinous ligament、横突間靱帯intertransverse ligament、および黄色靱帯があげられる。棘上靭帯は各椎骨の棘突起先端部を縦につなぐものである。棘間靱帯は隣接する2椎骨の棘突起間を結びつける。横突間靱帯は、たがいに隣接する横突起を縦につなぐ。また、黄色靱帯は隣接する2椎骨の椎弓板を縦につなぐ。頚部脊柱における棘上、および棘間靱帯は著しく厚みを増して項靭帯をなす。後者は第7頚椎から外後頭隆起にかけて存在するものであるが、頚椎棘突起のすべてと外後頭隆起に強い結合を示す。

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2. 正中神経の支配とその麻痺について述べよ。

正中神経median nerveは腕神経叢の内側および外側神経束より起こるが、腋窩と上腕では筋枝も皮枝も出さない。正中神経は以下のものを支配する。円回内筋(肘の屈曲と前腕の回内をもたらす)、橈側手根屈筋(手首のところで手を屈曲、あるいは外転させる)、長掌筋(手首のところで手を屈曲させる)、浅指屈筋(第2〜5指の中節骨を屈曲させる。同指基節骨および手首の屈曲も助ける)、短母指外転筋(母指を外転させる)、短母指屈筋(母指の中手指節関節を屈曲させる)、母指対立筋(母指を小指に対立させる)、第1・2虫様筋(中手指節関節を屈曲、指節間関節を伸展させる)、前骨間神経として長母指屈筋(母指の末節骨を屈曲させる)、深指屈筋(第2〜5指の末節骨を屈曲させる。同指の中節・基節・手首の屈曲も助ける)の外側半、方形回内筋(前腕の回内をもたらす)、掌枝として手掌外側半の皮膚、掌側指神経として外側3本半の指の掌側面皮膚、関節枝として肘・手首・手根の諸関節である。

肘の部分における正中神経損傷の場合は、前腕の回内筋群および長い屈筋群(ただし尺側手根屈筋と内側半深指屈筋を除く)が麻痺し、その結果、前腕は回外位に固定され、手首関節の屈曲力が弱まると共に手は内転状態に固定される。手が内転位を示すのは橈側手根屈筋の麻痺と、尺側手根屈筋および内側半深指屈筋が温存されることとによるものである。示指と中指の指節間関節屈曲は不可能になるが、これらの指の中手指節関節の屈曲は弱いながら骨間筋により行われうる。患者がにぎりこぶしを作ろうとするとき、示指(およびある程度は中指も)は伸展したままにとどまる。しかし環指と小指は屈曲する。後2指も浅指屈筋の麻痺により力は弱まる。母指の末節骨の屈曲も、長母指屈筋の麻痺により不可能となる。母指球筋が麻痺による退行を示すために母指球の扁平化も生じ、母指は外旋かつ内転した状態に固定される。このような状態の手は全体としても扁平な観を呈し、猿様手apelike handと称される。肘の部位での正中神経損傷は外側半以下の広さの手掌皮膚、および外側3・1/2指の手掌面皮膚の感覚脱失をまねく。外側半3・1/2指の遠位端手背面の皮膚の感覚脱失も起こることが多い。完全に無感覚となる皮膚領野は比較的小さいが、これはほかの神経からの皮枝による重複分布が存在するためである。

手首における正中神経損傷では母指球筋の麻痺と萎縮のため、母指球が扁平化する。母指は外旋かつ内転した状態で固定される。手も扁平化し、猿様手となる。母指の対立運動を行うことは不可能である。第1〜2虫様筋も麻痺するが、これは患者にゆっくりとにぎりこぶしを作らせるときに第2,3指が第4,5指よりも遅れて屈曲する傾向を示すような症状となってあらわれる。感覚脱失、血管運動障害、皮膚の栄養状態の変化などに関しては正中神経の肘の部位での損傷の場合と同じことが、正中神経の手首における損傷時についてもあてはまる。

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3. 尺骨神経の支配とその麻痺について述べよ。

尺骨神経ulnar nerveは腕神経叢の内側神経束より起こるが、腋窩と上腕では筋枝も皮枝も分岐しない。尺骨神経は以下のものを支配する。尺側手根屈筋(手首のところで手を屈曲、あるいは内転させる)、深指屈筋(第2〜5指の末節骨を屈曲させる。同指の中節・基節・手首の屈曲も助ける)の内側半、短小指屈筋(小指を屈曲させる)、小指対立筋(小指を母指に対立させる)、小指外転筋(小指を外転させる)、母指内転筋(母指を内転させる)、第3・4虫様筋(中手指節関節を屈曲、指節間関節を伸展させる)、すべての骨間筋(掌側骨間筋は中指を除く4指を中指に近づけ(4指を内転させる)、背側骨間筋は示指と環指を中指から遠ざける(2指を外転)。掌側および背側骨間筋は中手指節関節を屈曲、指節間関節を伸展させる作用も示す)、短掌筋(手掌皮膚にシワを作る、把握をより効果的にする)、尺骨動脈、手指と手掌内側半の皮膚、内側1本半指の掌・背側皮膚、関節枝として肘・手首・手の諸関節である。

肘の部位での尺骨神経損傷時には尺側手根屈筋および内側半深指屈筋の麻痺が生じる。尺側手根屈筋の麻痺については、患者ににぎりこぶしを作らせるとき同筋腱の緊張が生じず、また、そのときに第4,5指に向かう深指屈筋腱も作用しないため、これら2指の屈曲も十分には行えない。患者は手首を屈曲させようとしてもこれもうまくいかず、手首は外転する傾向を示すが、これも尺側手根屈筋麻痺の症状である。患者の前腕内側縁はその深部を走る筋の麻痺と萎縮により、扁平化する。手の短筋群のうちで正中神経支配を受ける母指球筋および第1〜2虫様筋以外のものが尺骨神経の肘における損傷時には麻痺するために、患者は指を内・外転させることが不可能となり、紙を2指の間ではさむことができなくなる。総指伸筋がわずかながら、指を外転させる作用を示す(ただし中手指節関節が完全伸展位にある場合のみ)。母指内転筋も麻痺筋に含まれるため、母指の内転が不可能となる。すなわち、患者に母指と示指とで紙をはさむようにさせるとき、患者はこの動作を行おうとして長母指屈筋を強く収縮させて母指末節を屈曲させることにより、脱落した母指内転筋の作用を補おうとする(フロマンの徴候Froment's sign)。虫様筋と骨間筋の麻痺は中手指節関節の過伸展をまねく(これらの筋が正常状態下では中手指節関節を屈曲させる作用を示すため)。しかし尺骨神経損傷による場合は第1〜2虫様筋(正中神経支配)が麻痺しないため、中手指節関節の過伸展は第4,5指に顕著である。指節間関節についても同様のことがあてはまる。すなわち、この関節は虫様筋と骨間筋による指伸筋腱膜展開部への作用で伸展するが、尺骨神経損傷時には第4,5指の指節間関節の屈曲変形が顕著となる。これらの状態が永続すると患者の手が特有の鷲爪手claw handとなる。尺骨神経支配筋の萎縮は小指球の扁平化や手掌内側縁の直線化をまねく。また、手背部では中手骨間に溝形成が目立つようになるが、これは背側骨間筋の萎縮によるものである。尺骨神経の肘の部位での損傷時における皮膚感覚の脱失は手の内側半および内側1・1/2指の前面と後面に発生する。

手首における尺骨神経損傷でも、母指球筋と第1〜2虫様筋を除く手の短筋群の麻痺が生じる。しかし、肘における尺骨神経損傷とは異なり深指屈筋の麻痺が生じないために、鷲爪手の形成がより顕著であって、指節間関節の屈曲変形もよりはげしい。手首における尺骨神経損傷時の皮膚の血管運動性変化および皮膚の栄養状態変化は、肘における尺骨神経損傷時にみられるものと同じである。尺骨神経損傷時には損傷の位置が高ければ高いほど、鷲爪手の形成が顕著でない。

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4. 橈骨神経の支配とその麻痺について述べよ。

橈骨神経radial nerveは腕神経叢の後神経束より起こる。橈骨神経は以下のものを支配する。上腕三頭筋(肘関節を伸展させる)、肘筋(肘関節を伸展させる)、上腕筋(肘関節屈曲をもたらす)の一部分、腕橈骨筋(肘関節を屈曲、前腕を回旋させて中等度回内位にもどす)、長橈側手根伸筋(手首のところで手を伸展、あるいは外転させる)、橈骨神経深枝として前腕の伸筋群(回外筋(前腕を回外させる)、短橈側手根伸筋(手首のところで手を伸展、あるいは外転させる)、尺側手根伸筋(手首のところで手を伸展、あるいは内転させる)、総指伸筋(第2〜5指と手を伸展させる)、小指伸筋(第5指の中手指節関節を伸展させる)、示指伸筋(示指の中手指節関節を伸展させる)、長母指伸筋(母指の末節を伸展させる)、短母指伸筋(母指の中手指節関節を伸展させる))、下外側上腕皮神経・後上腕皮神経・後前腕皮神経として上肢の外側および後面の皮膚、橈骨神経浅枝として手背外側半および外側3本半指の手背の皮膚、関節枝として肘・手首・手の諸関節である。

橈骨神経の腋窩内損傷時には、運動性の面では上腕三頭筋、肘筋および長い腱が手首を通過するような伸筋群の麻痺が起こり、患者は肘関節、手首関節、あるいは指を伸展することができなくなる。垂手wristdrop、あるいは手首関節の屈曲が、拮抗者を失った屈筋群の作用で生じる。腕橈骨筋と回外筋も麻痺するが、しかし前腕回外作用は上腕二頭筋の力により行いうる。感覚性の面では上腕下方部分の後面の皮膚および前腕後面の長細い皮膚領域、手背外側部皮膚、さらには外側3・1/2指のつけ根の部分の指背面皮膚に感覚脱失が生じる。感覚の完全脱失状態に陥る皮膚領域が比較的狭いのは、橈骨神経皮枝と上肢の他の神経皮枝とが重なり合って分布しているような皮膚領域がかなり広いことによる。皮膚の栄養状態の変化は少ない。

上腕骨橈骨神経溝における橈骨神経損傷により、手首関節および手指の伸展が不可能となって垂手を生じる。感覚性症状としては、手背面皮膚および外側3・1/2指のつけ根部分を被う指背面皮膚にさまざまな広さで感覚脱失が出現する。

橈骨神経深枝の損傷の場合、回外筋および長橈側手根伸筋への橈骨神経支配は温存され、しかも長橈側手根伸筋が強力な筋である関係上、手首関節の伸展能は保たれ、垂手は生じない。深枝は運動神経であるため、皮膚の感覚脱失も生じない。

橈骨神経浅枝(これは感覚性である)の損傷の場合、手背面皮膚と外側3・1/2指のつけ根部分を被う指背面皮膚にさまざまな広さの感覚脱失が生じる。

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5. 脊椎と脊髄、脊髄根の位置関係について述べよ。また脊髄根がでる部分の構造についてものべよ。

椎骨の椎孔は全脊柱を通じてひとつづきの脊柱管を作り、その中に脊髄spinal cordを入れる。脊髄は延髄の続きをなす中枢神経部分として、大後頭孔の高さから第1腰椎下端の高さにまで伸びる灰白色の構造物である。脊髄はほぼ円柱状形を示すが、しかし頚髄部および腰髄部では横広がりな脊髄の頚膨大と腰膨大が認められる。脊髄はその下端で細まり、脊髄円錐を形成するが、その円錐尖の部位からは終糸とよばれる脊髄軟膜により作られる糸状構造が下方に伸び出して、尾骨後面にまで達している。脊髄の前面正中部には前正中裂が、後面正中部には後正中溝が、それぞれ存在する。

脊髄の全長から31対の脊髄神経spinal nerveが出るが、各神経は前根(運動根)と後根(感覚根)をもつ。各根は1つの髄節の長さに相当する脊髄部分の表面に付着するような、多数の根線維の集合したものである。脊髄神経後根はそれぞれ1個ずつの脊髄神経節をそなえるが、その神経節に含まれる神経細胞体の末梢側および中枢側突起が感覚伝導性神経線維を形成する。脊髄神経の前根と後根は脊髄を離れて脊柱管壁の椎間孔に向かい、椎間孔内でたがいに合し、運動神経線維と感覚神経線維が混ざり合った脊髄神経となる。後者は椎間孔から出てから間もなく、前枝と後枝(両枝とも、運動性神経線維と感覚性神経線維を含む)に分岐する。脊柱管の長さの発育が脊柱管内に納められている脊髄の長さの発育よりも大きいため、脊髄を出てから脊柱管壁の椎間孔に至る脊髄神経前・後根の走行距離が下位の脊髄神経ほど長くなる。すなわち、上部頚神経の前・後根は脊髄を離れてからほぼ水平に向かう短いものであるが、腰神経や仙骨神経の前・後根は脊髄下端を越えて垂直に下行してからはじめて目的の椎間孔に達する。脊髄の終糸を取り囲む、このような下行根群の集まりを馬尾と称する。

脊髄は硬膜、クモ膜、軟膜からなる髄膜で被われる。硬膜は丈夫な線維性結合組織の膜であり、脊髄および馬尾を囲み、上方では大後頭孔を通過して脳の硬膜内葉につながるとともに、下方では第2仙椎下面の高さで脊髄終糸を付着させて終わっている。脊髄硬膜と脊柱管の骨膜とはゆるやかに結合しており、両膜の間隙が脊柱管内の硬膜外腔extradural spaceにほかならない。この硬膜外腔には疎性結合組織のほか、内椎骨静脈叢が含まれている。脊髄硬膜は31対の脊髄神経の神経上膜epineuriumに移行する。また、脊髄硬膜の内面は脊髄クモ膜に接している。クモ膜は薄いが水を通さないような結合組織性の膜であり、硬膜と軟膜のあいだに位置し脊髄被膜の一部をなす。クモ膜と軟膜のあいだには広いクモ膜下腔subarachnoid spaceがあり、脳脊髄液cerebrospinal fluidを満たしている。脊髄クモ膜は上方では大後頭孔通過して脳クモ膜に移行し、下方では第2仙椎下端の高さで脊髄終糸に付着点を与えて終わっている。脊髄円錐下端と第2仙椎下端のあいだでは、馬尾を構成する脊髄神経根が脳脊髄液に浸っている。脊髄クモ膜は脊髄神経根を被い、脊髄神経起始部ではわずかではあるが、外側方へのクモ膜下腔の突出を形成する。軟膜は脊髄を直接被う血管に富んだ結合組織性の膜である。脊髄の軟膜は、上方では大後頭孔を境に脳軟膜へ移行し、下方では脊髄終糸への移行を示す。脊髄神経の前根群と後根群とのあいだの部位で、脊髄軟膜は肥厚して外側方に張り出して歯状靱帯を作る。この靱帯は脊髄硬膜に付着するものであり、脊髄の位置を正中部に保つうえでの重要な役割を演じる。脊髄軟膜は脊髄神経根をも直接被い、脊髄神経を囲む結合組織に移行する。

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6. 鎖骨下動脈の枝とその分布について述べよ。

右の鎖骨下動脈subclavian arteryは右胸鎖関節のうしろの部位において腕頭動脈より生じる。そののち、前斜角筋の後方に向かい上外側方に走行し、第1肋骨の外側縁の部位で、右腋窩動脈と名前を変える。左の鎖骨下動脈は大動脈弓より起こり、頚基部に向かい上行したのちに外側方へと向きを転じる。鎖骨下動脈の枝は、椎骨動脈vertebral artery、甲状頚動脈thyrocervical trunk、内胸動脈internal thoracic artery、肋頚動脈costocervical trunk、頚横動脈である。椎骨動脈は第6頚椎以上の横突孔、大後頭孔を経て、脳底動脈となり、大脳動脈輪を形成する。この間に、脳底動脈から、延髄、小脳、橋、脊髄に分布する枝を出す。また、椎骨動脈からは多数の脊髄枝spinal branchesと筋枝muscular branchesが分かれる。脊髄枝は椎間孔を通り脊柱管内に進む。甲状頚動脈は下甲状腺動脈inferior thyroid artery、上行頚動脈、肩甲上動脈suprascapular arteryに分かれる。下甲状腺動脈は甲状腺・咽頭・喉頭・食道・気管を、上行頚動脈は後頭筋・項筋・脊髄を、それぞれ栄養する。肩甲上動脈は肩甲回旋動脈と交通する。内胸動脈からは、胸腺枝、心膜横隔動脈、前肋間枝、筋横隔動脈、上腹壁動脈に分かれる。胸腺枝は胸腺を、心膜横隔動脈は胸腺・心膜・横隔膜を、筋横隔動脈は横隔膜・胸腔の外側壁を、それぞれ栄養する。前肋間枝は胸大動脈から出る肋間動脈と交通し、肋間筋を栄養する。上腹壁動脈は腹筋に分布しながら下腹壁動脈と交通する。肋頚動脈は最上肋間動脈superior intercostal artery、深頚動脈deep cervical arteryに分かれる。最上肋間動脈からはさらに第1および第2肋間隙に分布する肋間動脈が出る。深頚動脈は後方に走行し、後頚部の筋に向かい、項筋・背筋を栄養する。頚横動脈は浅枝と深枝に分かれる。浅枝は僧帽筋・肩甲挙筋・棘上筋を、深枝は前鋸筋・菱形筋・僧帽筋・項筋を、それぞれ栄養する。

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7. 腋下動脈の枝とその分布についてのべよ。

腋窩動脈axillary arteryは第1肋骨外側縁から、鎖骨下動脈subclavian arteryの続きとして始まり、大円筋下縁で上腕動脈に接続して終わる。腋窩動脈からの枝は、最上胸動脈highest thoracic artery、胸肩峰動脈thoracoacromial artery、外側胸動脈lateral thoracic artery、肩甲下動脈subscapular artery、前上腕回旋動脈、後上腕回旋動脈である。最上胸動脈は小胸筋上縁に沿う走行を示し、小胸筋・前鋸筋を栄養する。胸肩峰動脈は三角筋・大胸筋・肩峰を栄養する。外側胸動脈は小胸筋下縁に沿った走行を示し、前鋸筋・乳腺を栄養する。肩甲下動脈は肩甲下筋下縁に沿って走行し、胸背動脈、肩甲回旋動脈に分岐する。胸背動脈は広背筋・前鋸筋を、肩甲回旋動脈は棘上筋・棘下筋・大円筋・小円筋・肩甲下筋などを、それぞれ栄養する。前および後上腕回旋動脈は上腕骨外科頚のそれぞれ前面と後面をめぐる走行を示し、肩関節やその付近の筋を栄養する。

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8. 肘関節の構造について述べよ。

肘関節elbow jointは腕尺関節、腕橈関節、上橈尺関節からなる複関節である。腕尺関節は上腕骨滑車と尺骨の滑車切痕によって形成される滑膜性の蝶番関節で、肘の屈伸運動を関与する。腕橈関節は上腕骨小頭と橈骨頭の上面の関節窩によりなる球関節であり、屈伸・回旋運動に関与する。上橈尺関節は橈骨頭の関節環状面と橈骨輪状靱帯および尺骨の橈骨切痕との間で形成される滑膜性の車軸関節であり、回旋運動に関与する。関節面はいずれも硝子軟骨により被われる。関節前面における関節包は上方で上腕骨の鈎突窩および橈骨窩の上縁、上腕骨の内側および外側上顆の前面に付着し、下方では尺骨鈎状突起および橈骨頭を取り巻く橈骨輪状靱帯に付着する。また、後面における関節包は上方で上腕骨の肘頭窩に付着し、下方で尺骨肘頭の上縁および側面、橈骨輪状靱帯に付着する。

外側側副靱帯lateral collateral ligamentは三角形をした靱帯であり、その頂点にあたる部分が上腕骨外側上顆に、その底辺にあたる部分が橈骨輪状靱帯上縁に、それぞれ付着する。内側側副靱帯medial collateral ligamentも三角形を呈するのであるが、上腕骨内側上顆から尺骨鈎状突起内側面に至る前線維束、上腕骨内側上顆から尺骨肘頭内側面に至る後線維束、前線維束と後線維束の尺骨付着部のあいだをつなぐ横線維束を主たる構成要素としている。橈骨輪状靱帯は橈骨の関節環状面を輪状に取り巻く強い靱帯で、尺骨の橈骨切痕前縁から出てその後縁に着く。方形靱帯は尺骨の橈骨切痕の下縁と橈骨頚とを結ぶ線維束である。

肘の屈曲運動は上腕と前腕の前面同士が接着することによる運動範囲の限定を、伸展運動は関節前面を走る靱帯および上腕筋の緊張による運動範囲の限定を、それぞれ受ける。肘関節屈曲筋は上腕筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋、円回内筋であり、肘関節伸展筋は上腕三頭筋および肘筋である。

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9. 肩関節の構造とそれをささえる筋についてのべよ。

肩関節shoulder jointは丸みを帯びた上腕骨頭と肩甲骨関節窩(浅く、西洋梨形のもの)の接合部をなすものである。関節面は硝子軟骨で被われており、さらに関節窩の辺縁には線維軟骨性の関節唇が存在し、関節窩を深めるために役立っている。肩関節も滑膜をそなえ、球関節の典型的なものである。肩関節の関節包は関節腔を囲んだのち、内側方では関節唇の基部に付着し、外側方では上腕骨解剖頚に付着する。肩関節の関節包は薄くて軟らかいため、関節の運動範囲を広げるのに役立っている。この関節包の一部を補強するものに肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の腱につながりを有する回旋腱板がある。関節上腕靱帯glenohumeral ligamentsも線維性結合組織性の3条の弱い帯ではあるが、肩関節包の前面を補強している。上腕横靱帯transverse humeral ligamentは上腕骨の大・小結節を結ぶ靱帯で、これも肩関節包の補強靱帯の1つである。烏口上腕靱帯coracohumeral ligamentも肩関節包を補強しながら、烏口突起基部より上腕骨大結節に至る靱帯である。肩関節を周辺で支える靱帯としては烏口突起と肩峰突起をつなぐ烏口肩峰靱帯coracoacromial ligamentがある。この靱帯は肩関節の上面を支える役割を果たす。肩関節の滑膜は関節包の内面を被って関節軟骨の辺縁部まで至るのであるが、その経過中に関節腔内を走る上腕二頭筋長頭腱の表面をも被う。また肩関節滑膜の一部は肩甲下筋下包として関節包前面からの突出を示す。

肩関節の運動について、屈曲は三角筋の前部、大胸筋、上腕二頭筋、烏口腕筋の収縮による。伸展は三角筋の後部、広背筋、大円筋の収縮による。上腕の外転は肩関節の動きと胸壁面での肩甲骨回旋とによってもたらされるが、そのときの肩関節の動きは三角筋中部、棘上筋の収縮による。棘上筋は動作の最初の段階で上腕骨頭を関節窩に対して押さえつける。その結果はじめて、三角筋中部の力が上腕骨外転のための有効なものとなるのである。内転は大胸筋、広背筋、大円筋、小円筋の収縮による。外旋は棘下筋、小円筋、三角筋後部の収縮による。内旋は肩甲下筋、広背筋、大円筋、三角筋前部の収縮による。円運動は上記6種の運動を組み合わせたものである。

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10 腕神経叢についてのべよ。

腕神経叢brachial plexusを出て上肢に分布する神経群は以下のような重要な機能を担う:(1)皮膚および深部(関節など)からの感覚を伝える、(2)筋の運動支配、(3)交感性血管運動神経線維による血管内腔の広さの調節、(4)交感性分泌神経線維による汗腺分泌統御。これらの神経が上肢に進入する前に腕神経叢が形成されるのであるが、このことにより脊髄の異なる髄節に所属する神経線維が効果的に異なる神経、異なる上肢内部位に分布することが可能になる。腕神経叢は後頚三角部において、第5〜8頚神経および第1胸神経の前枝により形成される。

腕神経叢を根部roots、神経幹部trunks、幹分岐部divisions、神経束部cordsという4部分に区分することができる。C5根とC6根が合体することによって上神経幹upper trunkが形成されるが、C7根はそのまま中神経幹middle trunkになる。また、C8根とT1根が合体することによって下神経幹lower trunkが形成される。次に、どの神経幹も膳・後に向かう幹分岐を示すが、上神経幹と中神経幹の前方幹分岐はたがいに合わさり外側神経束lateral cordを作る一方で、下神経幹の前方幹分岐はそのまま内側神経束medial cordに続く。上・中・下神経幹の後方幹分岐はたがいに合わさり、後神経束posterior cordを作る。

腕神経叢からの枝を列挙すれば以下のようである。神経叢根からの枝は肩甲背神経(C5)、長胸神経(C5〜7)であり、上神経幹からの枝は鎖骨下筋神経(C5〜6)、肩甲上神経(C5〜6)で、外側神経束からの枝は外側胸筋神経(C5〜7)、筋皮神経(C5〜7)、正中神経(C5〜8,T1)の外側根で、内側神経束からの枝は内側胸筋神経(C8,T1)、内側上腕皮神経(C8,T1,2)、内側前腕皮神経(C8,T1)、尺骨神経(C8,T1)、正中神経の内側根で、後神経束からの枝は上および下肩甲下神経(C5〜6)、胸背神経(C6〜8)、腋窩神経(C5〜6)、橈骨神経(C5〜8,T1)である。

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