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腎泌尿器系 Urinary system

【目標】

(授業プリント4枚)

【0】腎泌尿器系とは

腎泌尿器系の主機能としては尿の産生と貯留、排泄がある。腎は尿の産生と組成の調節を行い、膀胱は尿の貯留と排泄を行っている。

【1】腎臓 kidneyの概略 プリント[1]

腎臓内側面中央には腎門Hilusがあり、腎動脈・腎静脈・尿管の出入り口である。

腎臓は外側の皮質Cortexと内側の髄質Medullaからなる。 髄質は腎錐体Pyramidからなり、腎門に向かって突出しこの部分を腎乳頭Renal papillaと言い腎杯Calyxで囲まれる。腎杯は集まって腎盤Renal pelvis(腎盂)となり尿管へ移行する。皮質は隣り合う腎錐体Pyramidの間を分け入り腎柱Renal columnを作る。

【2】ネフロン nephron プリント[2]&[3]

ネフロン nephron(腎単位)とは腎臓の機能―尿の生産と排泄―を果たす最小単位である。ネフロンは腎小体Renal corpuscle尿細管Renal tubuleから成る。腎小体は糸球体Glomerulusとそれを取り囲むボウマン嚢から成り、腎臓血管系と尿管系の接点の場である。尿細管系は機能と形態の違いにより近位尿細管(曲部と直部)、ヘンレループ、遠位尿細管(直部と曲部)、集合管から成る。

ネフロンには皮質ネフロン傍髄ネフロンの2種類がある。皮質ネフロン(表在ネフロン、短ループネフロン)は糸球体が表層付近に存在し、ヘンレループは下行脚から直に(上行脚を経ることなく)遠位尿細管直部へ移行する。一方傍髄ネフロンは糸球体が深部に存在し、ヘンレのループが深層まで走行する。この為傍髄ネフロンではヘンレのループの下行脚と上行脚の間で尿の凝縮が行われている。

【3】ネフロン各部の細胞形態(←重要)

(A)腎小体Renal corpuscle プリント[4] [5] [6] [7] [9]

腎小体は直径0.2mm程度の球状体で、ボウマン嚢Bowman's capsuleという扁平上皮細胞の窪みに糸球体が入り込んでいる。腎動脈(→弓状動脈→小葉間動脈→)からの血液は輸入細動脈afferent arterioleを経て糸球体に運ばれ濾過された後、血流圧を維持したまま輸出細動脈efferent arterioleを経て腎小体を出て行く。漉し出された原尿はボウマン嚢から尿細管へ向かう。腎小体で血管が出て行く側を血管極と呼び、反対側の尿管が出て行く側を尿管極という。([4])

ボウマン嚢は中空構造をしている尿細管系末端が閉じて球状に膨らんだもの([6])で、その上皮は扁平で単純な一層の構造をしている。しかし尿細管への移行部では上皮細胞は立方上皮に近づく。また折れかえって糸球体毛細血管網を包む部分では、タコ足細胞Podocyteと呼ばれる特殊な形態を取る上皮細胞からなる。タコ足細胞は隣接する足構造が絡み合って毛細血管を覆っている。([5])

さて上述の通り糸球体では原尿の濾過が行われるが、この際循環血液と尿腔の間には血液尿関門(糸球体濾過バリアー)が存在する。血液尿関門は毛細血管側から順に(1)窓あき型毛細血管内皮細胞による内層(2)基底膜(3)タコ足細胞(糸球体上皮細胞)による外層という構造を取っている。([7])

(1) 窓あき型毛細血管内皮:毛細血管内皮は濾過という目的に即す為に、細胞質が薄く、直径70nm程の窓が開いた構造をしている。

(2) 基底膜:糸球体基底膜は通常の基底膜よりはるかに厚い。内層の血管内皮細胞と外層の糸球体上皮細胞の基底膜が合わさったものである。基底膜は大分子(70kD以上)の通過に対し物理的なバリアーをつくると同時に、マイナスにチャージして電気的バリアーの形成する。

(3) タコ足細胞:タコ足細胞は基底膜に接するように細胞質の突起を四方へ出している。突起の間には30〜60nmの狭い間隙が規則正しく形成され、この間隙には薄いスリット膜が存在する。

糸球体毛細血管網の支持組織はメサンギウムと呼ばれ、メサンギウム細胞Mesangial cellsとメサンギウム細胞から産生されたメサンギウム基質から成る。メサンギウム細胞は貪食や毛細血管血流調節を行なっていると考えられている。(後述の糸球体外メサンギウム細胞と区別すること)([9])

(B)近位尿細管proximal tubule プリント[8]

近位尿細管の細胞は立方状あるいは円柱状で核は中央にある。管腔側には刷子縁brush border(多くの微絨毛から成る)が存在し、再吸収に必要な膨大な細胞表面を作り出している。細胞の基底部には基底線条(←これはミトコンドリアが縦に配列したものであり、ここで作られたエネルギーが能動輸送に利用される)が存在する。ボウマン嚢に連続した基底膜を持ち、隣接する細胞同士はヒダをのばしあって噛み合っている。また細胞内部には貪食装置があり、取り込まれたタンパクはライソゾームで分解されて体循環に入っていく。

(C)ヘンレのわなloop of Henle細い部分 プリント[8]

ヘンレループの細い部分は細胞質に乏しい扁平な上皮(単層扁平上皮)が裏打ちしている。核は押されたような形で、刷子縁はない。ちなみにヘンレのわなの太い部分は遠位尿細管に属すると見なす。

(D)遠位尿細管distal tubule プリント[8]

遠位尿細管上皮細胞は立方状で良く発達した基底線条(ミトコンドリアの縦列+細胞ひだの噛み合い)を持つが刷子縁はない。主に残りのNaの再吸収を行っている。直部と曲部の連結部で糸球体血管極に近づき、緻密班を形成する(後述)。直部と曲部の構造は同様で、緻密班では異なっている。

(E)集合管collecting tubule

集合管は大半を占め細胞質の明るい主細胞と、暗い介在細胞で覆われている。主細胞は立方状で、細胞内小器官の少ない明るい細胞質を持つ。基底線条はみられない。介在細胞は多数のミトコンドリアを含む細胞内小器官に富み、このため暗く見えている。管腔側には微絨毛の発達が見られる。

【4】糸球体傍装置Juxtaglomerular apparatus(←重要)<内分泌器官> プリント[9]

糸球体傍装置はレニンを分泌することで、レニン・アンギオテンシン系を介して血圧と循環血漿量の恒常性の維持に関与している。糸球体傍装置は、遠位尿細管が接近する糸球体血管極の部分の事で、(1)糸球体傍細胞juxtaglomerular cells(レニン分泌)(2)緻密斑macula densa(遠位尿細管の一部)(3)糸球体外メサンギウム(ゴールマティヒ細胞)からなる。

(1) 糸球体傍細胞:大半の糸球体傍細胞は輸入細動脈壁に集合しているが、輸出細動脈にも少量は存在する。レニンを分泌する細胞顆粒をもつ巨大細胞で、平滑筋が特殊に分化したものである。

(2) 緻密斑:緻密斑は遠位尿細管上皮細胞が特殊に分化したもので、血管極に面した部分で核の凝集が見られ、線毛が一つずつある。緻密斑が遠位尿細管中を流れる尿量を検出すると、糸球体傍細胞からレニンの分泌が起こり、血圧や血漿量を調整するのである。

(3) 糸球体外メサンギウム:糸球体外メサンギウムは緻密斑直下に数層にわたり存在する扁平な細胞である。糸球体付近で糸球体内メサンギウム細胞の基部を形成する。

【5】腎臓の血管 プリント[10]&[11]

腎臓の血管系の全体像は「腎動脈→葉間動脈→弓状動脈→小葉間動脈→輸入細動脈→(糸球体→)輸出細動脈→腎静脈」である([10])。糸球体を出た輸出細動脈は複雑な毛細血管網となり、皮質尿細管の間の間質を通りながら、糸球体で濾過された原尿から尿細管上皮に取り込まれたものを再吸収している。しかし傍髄ネフロン糸球体からの輸出細動脈は真直ぐな直血管に分岐し、傍髄部を尿細管に沿って下行し上行する。この直血管は髄質部での水やイオンの交換に関与する。([11])

【6】膀胱上皮 プリント[12]&[13] 総論上皮組織参照

膀胱上皮は移行上皮であり、収縮時と伸展時で異なる形態を取る。最外層には被蓋細胞(大型の核、タイト結合、細胞膜肥厚)がある。粘膜筋板はなく、筋層は内縦中輪外縦である。


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